レビュー
しじらみ

しじらみ

3 years ago

4.5


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みんなのヴァカンス

映画 ・ 2020

平均 4.1

渓流下りの件が最高で、アルマがなかなか飛び込まないことに苛立つ姉、「「早くしろ」はプレッシャーをかけるだけだ」と受け売りの言葉で平静を装うもやはり嫉妬心が顔を出すフェリックス、ハッパを吸うことしか考えていないインストラクター、特に何も考えてなさそうなエドゥアールと、同一画角に収まる4人がそれぞれ全く異なる感情で突っ立ってるのがよい。しかも、勇気を振り絞って漸く飛び込んだアルマがもう一人のインストラクターにずっと抱きつき、インストラクターはインストラクターでそれを受け入れているのにキレてインストラクターの頬を引っ叩くのが、嫉妬に狂ったフェリックスではなく、特に何も考えてなさそうだったエドゥアールというのが素晴らしい。そこから水中でのバチャバチャした殴り合い、揉み合いの中でエドゥアールがインストラクターの片割れを怪我させてしまい、ひたすら最悪の空気になった瞬間に子守をするシェリフにカットが切り替わるキレ味。シェリフは『おおかみこどもの雨と雪』のTシャツを着て子守をしている。全然関係ないけど、あの赤子は将来ユキという友達ができるような気がする。 さて、絶対に2対1の構図を固定させない天井知らずの心地良さに塗れている本作なのだからエドゥアールは怪我を負わせたインストラクターに謝罪をし、インストラクターも爽やかに受け入れる。二人は中盤で話題に挙がったカラオケバーでこの会話をしているのだが、謝罪の後ろに聞こえてくる女性達の全く腹筋に力の入っていない歌声が非常に良い。和解したエドゥアールも気分良さそうにその輪の中に入っていく。しばらくして仲良くなった女性と共にシェリフも加わるのだが、このカラオケバーが開放の場として見事に機能している。シェリフが到着した時、それまでの生真面目な雰囲気のあくまで延長線上にあるテンションで弾けるエドゥアールの周りの客は、インストラクターと会話していた時とまるっと入れ替わっているところから、相当長い時間カラオケを楽しんでいたことが窺える。インストラクターも勿論いない。シェリフはシェリフで、最初は歌うことに気恥ずかしさを感じていたが、彼女に促され、今年最もエロい一線を越える瞬間へと繋がる助走としてのデュエットを始める。こういう宴がしっかり多幸感を演出してくれる映画はそれだけで傑作。 緑に囲まれて二人で目覚めて始まった本作は、緑に囲まれて一人で目を覚まし、新しい物語の予感を漂わせて終わる。