レビュー
この映画からは、子供が生まれたその瞬間から、子育ては始まっているのだと思い知らされます。一見すると劇中のケヴィンは、親から受けたしつけや教育とは関わりなく、生まれもっての悪であるかに見えます。しかし、個人的には母親であるエヴァに腹が立つ場面もしばしば。 望まない出産と子育てに苛立ち、子供にひどい言葉を投げ掛けたり、すぐに諦めたような表情をしたり。子供というのは親の気持ちを一番敏感に感じとる生き物です。ケヴィンはまだ幼いながらにして、母親の自分に対する怠惰でおざなりな愛情を感じ取っていたに違いありません。そして彼が最も愛してほしかった相手もまた、その母親なのです。だからこそ、母親が何をすれば嫌がるかを一番に理解し、彼女のささいな変化にも気づく。 残酷なのはエヴァがケヴィンから学んだ失敗を、2番目の子供に活かして育て上げていくことです。それを毎日目の前で見せられるわけですから、これはケヴィンにとって耐え難い生活でしょう。そんな彼が夢中になり、そして全てにピリオドを打った「弓」は、彼にとって唯一とも言える母親との甘い思い出の象徴にも関わらず、非常に皮肉で悲劇的な結末を迎える道具になります。 とは言え、やたらと血を連想させる赤をあちこちに配色したり、これでもかと言うほど子供を嫌なやつに描いたり…若干極端すぎるだろ、と突っ込みたくなるところも多かったですね。
いいね 9コメント 0


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.