レビュー
雅哉

雅哉

9 years ago

5.0


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メッセージ

映画 ・ 2016

平均 3.5

この映画のテーマは「時間には始まりも終わりもない」ということに集約されるだろう。それを象徴するのが禅宗の書画「円相」を彷彿とさせる、異星人ヘプタポッド(七本脚)の文字(円環構造)であり、映画冒頭と最後に流れるマックス・リヒターの音楽"On the Nature of Daylight"である。これは短いフレーズが何度も何度も繰り返されるミニマル・ミュージックの語法で書かれている。ヘプタポッドの姿は前も後ろもなく、エイミー・アダムス演じるルイーズの娘ハンナHannahの名前は前から読んでも後ろから読んでも同じ。これも始まりもなく終わりもないことを示している。また劇中に登場する「非ゼロ和(non zero sum)」という言葉が重要な意味を持つ。複数の人が相互に影響しあう状況の中で、ある1人の利益が、必ずしも他の誰かの損失にならないことを言う。例えば通常のボード・ゲーム〜オセロ・将棋・チェスなどは勝ち負けが必ず生まれる。戦争だったそうだ。それとは全く異なる価値観である。非ゼロ和になるには対話(communication)が必要。相手(相互の違い)を知ろうとすること。どちらが正義(勝者)でどちらが悪(敗者)という切断はしない。戦争の武器は殺戮兵器だが、非ゼロ和における武器は言葉である。キリスト教は天国と地獄、天使と悪魔、善と悪という分類・切断をする。だから非ゼロ和ではない。むしろ仏教や神道に近い考え方である。欧米人は今、アジアの思想(宗教)も取り込み、徐々に変わろうとしている。