レビュー
【ドレッシー心理サスペンス】 超神経質なドレスの仕立て屋と、その仕立て屋に愛された女の、ラストまで人間性の結論が出ない心理サスペンス。ならではの沢山のドレスの登場に、映画全体が煌びやか。 ◆ 出演は、『リンカーン』のオスカー俳優ダニエル・デイ=ルイス、ヨーロッパ映画を中心に活躍するヴィッキー・クリープス、『家族の庭』のレスリー・マンヴィルなど。世界三大映画祭の監督賞を制覇したポール・トーマス・アンダーソンの長編第8作目。 ◆ 天才的な仕立て屋のレイノルズはある日、ウェイトレスのアルマと出会い、新たなミューズに迎え入れる。彼はアルマの“完璧な身体”を愛し、ドレスを作り続けたが、アルマは、ある日朝食に微量の毒を混ぜ込む…。やがてふたりは、誰もが想像し得ない境地へと向かう。 ◆ これは愛なのか?憎悪なのか?最後の最後まで分からない、2人の愛の形に引き込まれる。『ビガイルド』を彷彿とさせる、毒キノコを使う異常な心理状態と、究極の緊張感漂う食卓。フワッと笑みを浮かべたアルマの表情が強烈に印象に残る。 この映画が絶妙なのは、そのラストまで各人の人間性の善悪がつかめないところ。仕事に異常なほど固執して、自らの私生活でも超神経質なレイノルズ。そしてそんなレイノルズを時には律し、時には鼓舞する姉。そんな2人に不満が増幅していくアルマ。彼らが一つ一つ迎える選択が読めず、ラストまで彼らの人間性の結論が出せない。アルマが医者の面談を受ける、映画の縦軸のシーンが冒頭から使われる事で、見ているこちらの連想を最後まで終わらせない、映画の構造的工夫が施されていると思う。 映画全体的には、仕立て屋の映画なだけあって、華やかなドレスがこれでもかと登場。その美しさに、自分はもちろん、女性なら相当うっとりしながら見られる映画だと思う。アルマがショーのモデルとして客前を歩くシーンは、華やかなランウェイを歩く疑似体験的な感覚も。 どんなもんかと思ってたけど、終わってみるととても見応えのある映画でした!
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