レビュー
Till

Till

4 years ago

4.0


content

羅生門

映画 ・ 1950

平均 3.5

第24回アカデミー賞で名誉賞(現在の国際長編映画賞)を受賞したサスペンス・ドラマ。 一応原作は芥川龍之介の短編小説『藪の中』と『羅生門』なのだが、舞台が『羅生門』というだけで、ストーリー自体はほぼ『藪の中』。最初にこの『藪の中』のザックリとしたストーリーを聞いたとき(読んではない)、「え、何それ。ミステリーとして破綻してるやん」なんて野暮な感想を抱いたものだが、これはミステリーとしてではなく人間ドラマとして捉えるべきだったのだと、この映画を観てようやく気づいた。 事件の関係者である多襄丸、真砂、金沢の3人。同じ時間に同じ状況にいたはずなのに、それぞれの供述は矛盾だらけで全く噛み合っていない。各々が各々の都合の良いように状況を解釈し、事実を歪曲させる。それゆえに、「真実」が藪の中に葬られてしまうという恐ろしさ。「エゴイズム」「虚栄心」そういう人間の醜い部分が生んだ悲劇であり、本質的には救いのない物語ではあるのだが、ラストで一筋の光が差し込む。ペシミスティックなところに終始するのではなく、人間の「善」の可能性までを示唆した黒澤監督からのメッセージに心を打たれた。原作にはないらしいが、これがあったことによって、より物語に「深み」が出たのではないだろうか。 ストーリーだけでなく、構成、演出、カメラワークなど技巧的な面に関してももちろん素晴らしい。日本が世界に誇れる数少ない1本だと思う。ちなみに、近日公開されるリドリー・スコット監督の最新作『最後の決闘裁判』で脚本を務めたマット・デイモンとベン・アフレックも本作からインスピレーションを受けたそうです。