レビュー
1957年の作品。『シャレード』のケーリー・グラントが出てました。プレイボーイのニコラ役で、働かなくても良いほどのお金持ちですが、本当は画家志望。婚約者が決まったというニュースから始まります。キャスターが紙を見ながら棒読みするニュースには、面くらいました。昔の風情たっぷりです。ニューヨーク行きの豪華客船で、テリーという女性と出会い、お互いに婚約者がいるという身で恋に落ちる物語。テリー役はデボラ・カーという女優さんで、今回初めて見ました。ボストンのナイトクラブ歌手という設定。ゴージャスな毛皮を身に纏う姿にもまた、時代の変化を感じてしまいました。ニコラとテリーの乗った豪華客船がニューヨーク近くまで来ると、ビル群が登場するのですが、リアル感なさ過ぎな…いかにも合成ですよ背景映像なので、古い映画だということを再認識するのですが、当時の技術でここまでやったぞ、といった努力も感じられます。二人は再会を誓って別れ、エンパイア・ステート・ビルディングの102階(展望台)で待ち合わせをします。この時代に、こんな高層ビルがすでにあったのか~と感心してしまいました。 だけど、ここでテリーが交通事故に遭うという悲劇がおきてしまうのですね。ニコラは夜まで待ちぼうけ。テリーはニコラに重荷を負わせまいと、自分の負ったケガのことを隠している。なんて悲しくも素敵な愛とも思ったのですが、反面、元婚約者に対しては結構ひどい仕打ちですよね。心変わりしたのに、婚約者ケネスとバレエ観劇に出かけて、車椅子を押してもらって。ケネスが本当のことを打ち明けるようにと、テリーに助言する下りは、ケネスの立場からするとかなりの悲劇だな、と思いました。ケネスは良い人過ぎです。最後に二人が結ばれて良かったね、とは思いましたが、取り残されたニコラの婚約者も、テリーの婚約者も、ちょっと可愛そうです。ニコラはお金持ちの婚約者と結婚したほうが楽な暮らしを送ることができるのに、彼女を選びませんでした。身体が不自由になっていても、テリーを愛し選んだニコラの姿が、この映画の良かったところです。 船旅の途中で、南フランスに寄港した時に登場するニコラのおばあちゃんが、要所要所に出てきて、ニコラとのやりとり、テリーとの会話、お互いの贈り物など、思い出にひたる時間を作ってくれて良かったです。豪華客船での最後の夜、「蛍の光」が流れ、しっくりきました。PodcastのSpeak up radioで、「何故に日本の商業施設ではこれが閉館の音楽なのか」という議論を聞いたことがあります。卒業式などでもお馴染みですよね。元はスコットランド民謡で再会を喜ぶような内容の歌詞。英語圏の国では大晦日のカウントダウンの時に使われる曲だとか。その後『哀愁(1940)』で使われた「オールド・ラング・サイン」という曲が、日本では『別れのワルツ』として大ヒットしたという経緯があるそうです。面白いですね。
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