
dreamer

追憶
平均 3.4
1930年代後半の大学のキャンパス。 自治会を牛耳っている、共産党シンパの女子大生バーブラ・ストライサンドが、スローガンを叫んで、アジ演説をぶっている。 それを作家志望のノンポリ学生ロバート・レッドフォードが聴いている。 それから数年後、この二人が、ラジオの仕事で出会い、結婚する。 彼女は、政治や社会問題の議論が大好きで、しばしば、その場をしらけさせる。 彼も辟易するが、我慢している。 やがて彼は、映画の都ハリウッドで脚本を書く事になり、彼女と共にカリフォルニアに移り住む。 そこで、ある騒動に巻き込まれ、バーブラの政治欲に火がつき、彼女は周囲の迷惑も顧みず、ワシントンへデモに行く。 ここに至って、レッドフォードは彼女に愛想をつかし、おさらばするのだった。 それから、数年経たある日、街角で二人は偶然に出会う。 彼は再婚した妻を連れている。 バーブラは、相変わらず街頭ビラまきをやっている。 二人は二言三言話してから、別々の方向へ歩み去って行く-------。 この映画「追憶」の原題は、"The Way We Were"。 男と女の出逢いと別れ。二人で歩いた十数年の歳月。 なんてロマンティックなんだろう。 マーヴィン・ハムリッシュの主題歌とシドニー・ポラック監督の演出が、ムードを高めていて、実にいいなあと、初めてこの映画を観た時は思ったものだった。 しかし、今回、私自身も時を経て、改めて観直してみて、「おやっ」と思った。 最初の大学のキャンパスの演説の場面をよく観ると、バーブラは、「フランコを倒せ!!」と叫んでいる。 1936年のスペイン市民戦争の時代を示しているわけだ。 また、ハリウッドの騒動は、俗にいう「赤狩り」、1951年のマッカーシズムだ。 そして、最後の場面は、バーブラが「水爆実験反対」のビラをまいている。 恐らく、1954年のビキニ核実験の前後だろう。 このように、各時代の政治状況が、きちんと描かれているのだ。 もし、バーブラのその後が描かれるならば、1960年代=ベトナム戦争、1970年代=ウーマン・リブ、1980年代=フェミニズムと突き進むに違いない。 彼女は、世界の状況に、常に積極的にコミットしていく政治的人間であり、「虐げられた人々の苦しみがわからないの!!」とか「黙って傍観していていいの!!」の文句で運動を煽る運動家なのだ。 一方、レッドフォードは、文学的人間なのだ。 政治運動をも含めた世界の総体を、文章で表現しようとしており、人間の心に目を向けている。 すぐムキになるバーブラに、彼はうんざりした顔で言う。 「君にはユーモアがわからない」と。 政治的人間と文学的人間。その乖離が、この映画「追憶」の主題なのだ。 昔からの文学の永遠の宿題である「政治と文学」を映画でやってのけるとは!!と、遅すぎた感銘を受けたのだ。