レビュー
きなこ猫

きなこ猫

6 years ago

3.0


content

希望の灯り

映画 ・ 2018

平均 3.5

閉塞感いっぱいの水槽の中で飼われる巨魚たちを眺めながら、ブルーノはいつも何を考えていたのだろう。彼は旧東ドイツ時代に、長距離トラックの運転手の仕事をしていたと言う。だが今は無機質なスーパーマーケットの中で、フォークリフトを運転する日々を繰り返しているだけだ。その景色のない空間で働くという息苦しさが、彼の心を徐々に蝕んで行ったのだろうか。ブルーノは統一されたドイツの新しい時代の流れに取り残されてしまった人間の一人でもあった。そして、いつまでも長距離トラックを飛ばしていた時代を懐かしんでいる。残された自分の人生の未来に「希望」というものを見出だせなかった男の末路は余りにも悲しすぎる。映画の舞台となるライプツィヒは、ドイツの内陸部に位置する都市だから海などないわけだが、ブルーノにはフォークリフトをゆっくり降下させていく音が「波音」のように聞こえると、同僚の女性にいつもふと漏らしていた。この無骨な中年男は見た目に似合わず、ピュアな心を持ったロマンチストだったのかもしれない。 本作は市井の人々の暮らしぶりを描くのが得意なアキ・カウリスマキ監督のファンなら、きっと好きになれる作品だと思います。