レビュー
これが、小津安次郎の映画。 あの当時を生きていた人々の会話や言葉遣い、動作、街並みの緻密さはこの世界の片隅にに通ずるものがあった。 冒頭ではさすがに昔らしいセリフの言い回しや白黒の画と不思議な視点に少し違和感ががあったが、次第に僕自身が53年のあの日にやってきたかのように思え、そのセリフ回しや映像こそが映画芸術であることに気付かされる。そして現代と当時との価値観の差異を超えて、僕の映画世界が再構築されるのを感じた。 日本人として、僕はこの東京物語を愛する。ゆらゆら仰がれるうちわ、パチパチ打たれる麻雀牌、フラフラ踊る千鳥足、どんちゃん響く祭、ありとあらゆる描写に日本文化の歴史を感じざるを得ない。愛さざるを得ない。 しかし世界中で評価されているのを見れば、もはやこの映画は「日本人として」などと言った帰属意識や「日本文化だから」と言ったおこがましい親日感情に影響されない、愛されるべき普遍的魅力を持っているのは明らかである。それがいわゆる小津調や冷たい家族、中流階級の日常なのだ。
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