
てっぺい

ぼくが生きてる、ふたつの世界
平均 3.7
2024年09月21日に見ました。
【エンドロールで泣ける映画】 ろう者を両親に持つ聴者の子供。実話をもとに紡がれる物語は、吉沢亮の演技力と、母からの無償の愛が結実しラストで涙腺崩壊。エンドロールに施された演出にさらに涙が止まらなくなる。 ◆トリビア 〇吉沢亮は、演じた大について「自分の失敗を親のせいにして、コーダだから辛いと思い込んでいる。周りから見たら『親とのあるあるだよね』みたいな距離感を意識していました」と普遍的な人物像を念頭に置いたという。(https://www.cdjournal.com/main/news/-/113050) 〇吉沢は2カ月間手話を特訓。ただセリフの手話を覚えるだけではなく、表情でリアクションしたり、表情管理も手話の表現になるという点が大変だったとし、「演技の上手い下手以前に、ちゃんと会話が成立している、という空気感がこの作品にはどうしても必要だったので、どうやってみせていくか、僕がどれだけ手話を上達できていくかが大変ではありました」と明かす。(https://www.cinemacafe.net/article/2024/06/23/92234.html) 〇吉沢について監督は「この映画って(主人公の人生の)瞬間、瞬間を結構、点描で描いているんですが、その間に何があったのかを感じられるようなお芝居を順を追ってやってくださっている。それをつなげてみた時、私自身、すごく胸が熱くなりました」と絶賛する。(https://www.yomiuri.co.jp/culture/cinema/20240918-OYT1T50179/) ○吉沢と、母親を演じた実のろう者である忍足亜希子は、手話の難しさや手話の語源などについて、現場で実際に手話で会話していたという。(https://www.tst-movie.jp/int/bokugaikiterufutatsunosekai-oshidariakiko-20240918.html) 〇忍足は、「中学1年生になるコーダの娘がいるので、重なる部分もあった。台本を読みながら、泣きそうになったが、我慢して読み終えた。いろいろな“世界”があると感じてもらえれば」と振り返る。(https://eiga.com/news/20240905/21/) 〇本作では、母親役の忍足、父親役の今井彰人をはじめ、ろう者の登場人物にはすべてろう者の俳優が起用されている。(https://eiga.com/news/20240905/21/) ろう・手話演出に2名、コーダ監修に1名、手話監修協力として全日本ろうあ連盟の参加も仰ぎ、準備から撮影まで丁寧に時間をかけたという。(https://eiga.com/movie/100863/critic/) 〇父親役の今井と、子供役の吉沢亮は実は数えるほどしか年齢が離れていない。(https://www.yomiuri.co.jp/culture/cinema/20240918-OYT1T50179/) ○ “ふたつの世界”を対比させるため、映画の「音楽」である“劇伴”をつけず、劇中の店内音楽などの現実音でさりげなく主人公たちの心情に寄り添う演出でリアリティを生み出している。(https://eiga.com/movie/100863/critic/) 〇呉監督は在日韓国人。幼い頃にウジウジ考えていたことが、社会人になって色んな人と出会うことで、達観できるようになった経験が大とリンクしたという。「そんな経験から、普遍的な心の機微みたいなものが描けるのではないかと思ったんです。」(https://cinemore.jp/jp/news-feature/3644/article_p1.html) 〇『Coda コーダ あいのうた』('22)を呉監督が鑑賞したのは、本作の企画開始のあと。「ろう者の役を本当のろう者の俳優さんにやって頂くということが、すでにされていたので、これはアジアという場所でも、ぜひとも実践をしたいなと思いました」と参考にした部分もある事を明かした。(https://www.cinemacafe.net/article/2024/06/23/92234.html) ○本作と厚生労働省がタイアップ。本作のビジュアルを使用した「手話通訳等の意思疎通支援者」の普及啓発ポスターを作成、3か月間、全国の聴覚障害者情報提供施設などに掲出される。(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_001_003.html) ◆概要 ロンドン映画祭コンペティション部門、バンクーバー国際映画祭パノラマ部門正式出品作品。 【原作】 五十嵐大による自伝的エッセイ「ろうの両親から生まれたぼくが聴こえる世界と聴こえない世界を行き来して考えた30のこと」 【脚本】 「正欲」港岳彦 【監督】 「そこのみにて光輝く」呉美保 【出演】 吉沢亮、忍足亜希子(『アイ・ラヴ・ユー』('99)で日本最初のろう者主演俳優としてデビュー)、今井彰人、ユースケ・サンタマリア、鳥丸せつこ、でんでん 【公開】2024年9月20日 【上映時間】105分 ◆ストーリー 宮城県の小さな港町。耳のきこえない両親のもとで愛情を受けて育った五十嵐大にとって、幼い頃は母の“通訳”をすることもふつうの日常だった。しかし成長するとともに、周囲から特別視されることに戸惑いやいら立ちを感じるようになり、母の明るさすら疎ましくなっていく。複雑な心情を持て余したまま20歳になった大は逃げるように上京し、誰も自分の生い立ちを知らない大都会でアルバイト生活を始めるが……。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆ふたつの世界 父が仕事を行う無音の世界から始まる冒頭。本作のキーであるこの“ろうあ”の世界にグッと引き寄せられる。全体としても劇伴が使用されず、聴者とろう者が近い目線で本作を鑑賞できるような演出。印象的だったのは、父が大に上京を促すシーン。すぐそばを轟音の電車や車が行き交う中、聴者の世界では会話もままならないはずの空間で、父の“駆け落ち”やパフェの話、大を奮い立たせる会話が何の障害もなく通ずる世界が自然に描かれていた。終盤、電車の中で大と母が手話で楽しげに会話するシーンも、(意味としては大が公然で手話を初めて受け入れるものだったが)手話ができれば、静寂がルールの車内でいくらでも楽しい会話ができるのだ。ろうあの世界を、穏やかにその利点を垣間見せてフラットな目線で描く、本作のそんなスタンスが素晴らしいと思った。 ◆大 “郵便ごっこ”で母と仲睦まじく遊ぶ大も、次第に他の家庭との違いに気づき、心を閉ざしていく(監督が選び抜いたという子役が吉沢亮に激似!)。全体的に手話をいとも自然にやりこなす吉沢亮の仕上がりにも感心しきり。ラストで母の背中から蘇ったそのカメラ正体の面影は、大の目線で見た母の表情。耳は聞こえずともその目でいつも大を見つめ、楽しい時も哀しい時もいつも大を見守った母の無償の愛そのものだった。それに意図せず涙でむせび出す吉沢亮の演技には見ているこちらも当然涙腺崩壊、あのシーンが本当に素晴らしかった。暗いトンネルに入る画に重ねられ、ネガティブに表現されていた大の上京時の心のモヤモヤも、無償の愛を受け、様々な経験を積み、そして晴れた大の心のようにトンネルから抜け光に包まれる。そんな大が綴り始めた“ぼくが生きてる、ふたつの世界”は、“実力以上の仕事が降ってくる”タモリの言葉など到底超越した、素晴らしい内容になるはず。本作は、体の成長はもちろん、心のそれも描いた大の成長物語にもなっていた。 ◆母 いつも耳の代わりを務めてくれた大が上京を決めた時、躊躇なく“応援する”と、背広を新調する母。上京した大に何度も仕送りし、聞こえない電話にも“応援してるね”とただ連呼する姿に心を打たれる。ろう者の女性が大に“やれる事を取ってほしくない”と伝えるシーンがある。その後母のパスタを大が注文するシーンが存在するのは、母がそんな本音を実は隠している間接的な表現か。ただ一度だけ母は病院で大泣きするが、大から“こんな家に生まれたくなかった”と伝えられた時、あるいは彼女自身そのろうあに涙した事はきっとあったと思う。つまり、大の目線で切り取られた本作では、母はいつでも気丈で笑顔なのだ。本作でとめどなく表現された母の無償の愛は、間接的に省かれた母の涙を思うと尚更深い。エンドロールで流れた、おそらく母の仕送りに添えられた手紙を歌詞にした曲には、母から子へのそんな全ての愛が凝縮。“あなたの人生を応援しています”の言葉達に、館が明転しても涙が止まらなかった。 ◆関連作品 ○「そこのみにて光輝く」('14) 呉監督の代表作。第87回アカデミー賞外国語映画賞部門出品作品。プライムビデオ配信中。 ○「きみはいい子」('15) 呉監督の代表作。現代社会の闇に少し光が当たる物語。プライムビデオレンタル可。 ◆評価(2024年9月20日現在) Filmarks:★×4.0 Yahoo!検索:★×4.4 映画.com:★×4.5 引用元 https://eiga.com/movie/100863/