レビュー
『海辺の映画館』より余程観やすい。 純文学を大林節で映像化した感じ。第二次世界大戦前の学生たちの恋愛模様や学生生活を綴った作品といえば正解か? 不思議な世界観だし、言い回しが妙だけど、なぜかそんなに違和感がない。それは時代もあるのだろうか。近しい時代を生きた大林さんだからこそ描ける人間模様だと思う。 当時の人たちはひどく純粋だ。それは今の時代のように情報が錯綜していないし、交通手段も限られているため、小さな社会で生きているからというのもある。あと、娯楽が少ないとか、生活様式が大きく違うので、比べるに列挙に暇がない。だからこそ、当時の人間だけに成り立つ純文学があるし、だからこそ、人間臭い人間関係の縺れがある。 この作品はその人間関係の縺れに魅力がある。しかも、戦争前という、重い影が差し込み、ただの恋愛には止まらない。さらに大林節が加われるので、内容はいまいち説明しがたい。 ただ、反戦、無頼派と呼んだ方がいいのか、そのメッセージ性は強く伝わる。晩年の大林映画は戦争をテーマにした作品ばかりだ。後世に伝えたい想いが強かったんだろうなぁ。たしかに、大林さんの世代がいなくなると戦争を伝えていける世代がいなくなる。もしかしたら、そういうのも考えていたのかもしれない。いや、それとも人間を描くにあたって、戦争という世界の大きな流れに巻き込まれる人間ドラマにこそ魅力を感じていたのだろうか。
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