レビュー
2020年138本目は、インディーズ製作ながらアカデミー賞にもノミネートされた『行き止まりの世界に生まれて』。 ------------------------------------------------------------ 寂れた片田舎で少年同士がスケボーをきっかけに強固なコミュニティを形成していく姿は、『ロードオブ・ドッグタウン』や『スケートキッチン』といった青春グラフィティを思い出させます。しかし本作にはそんな爽やかさは皆無で、あまりの息苦しい閉鎖的な環境ゆえ、スケボーにしか救いを見出せなかったのだという事実が徐々に浮かび上がってくる、深刻なドキュメンタリーでした。 ------------------------------------------------------------ イリノイ州ロックフォードは貧困率が20%を超える非常に貧しい都市です。ただメンバーでもあり監督でもあるビンは、自らが不幸である理由を経済格差ではなく、生い立ちにあることを明らかにしていきます。ロックフォードは決して治安が良い場所ではありませんが、中でも「暴行」の発生率は群を抜いて高く、アメリカ国内でワースト3位に位置するほどです。ビンもザックもキアーも…虐待の被害者だったんですね。 ------------------------------------------------------------ また本編が進むにつれ、私たちは「虐待は虐待を生む」という最悪のシナリオを目の当たりにしなくてはなりません。しかも10年以上も親友と呼べる間柄を築いてきた人間の。仲間や自分自身の消したい過去も含め、何もかもを映像として残すのは本当に勇気のいる行為だったでしょう。過去の楽しい記憶を交えながらのため余計に生々しさが残りますが、その叫びには耳を傾ける価値があると思います。
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