
ジュネ
3.5

WAVES/ウェイブス
映画 ・ 2019
平均 3.3
2020年96本目は、前作も高い評価を得たトレイ・エドワード・シュルツ監督が更に躍進しました『WAVES/ウェイブス』。 ------------------------------------------------------------ 視覚的な幸福感を徹底的に追求した映画となっており、画面上を彩るピンクやブルーの色彩が目にも美しい一作です。『ラ・ラ・ランド』や『ブルックリン』など、服飾や背景に表現されるカラーと登場人物の心情をリンクさせる作品は多数ありますが、もはやその手法が1つのトレンドと化していることを感じさせます。中でも本作は、単に色とりどりの服を着る、家具やセットの壁面を鮮やかにする…といった工夫に留まりません。なんと画面上に突如として「色が広がる」のです。 ------------------------------------------------------------ 更に驚くのは、タイラーやその妹である心情に重ねるように画面サイズが普通→シネスコ→ビスタと変幻自在に変わっていく点です。これによって、心を閉ざし破滅的な道へと堕ちていくタイラー、絶望の縁に立たされるエミリーに対する没入感が強まります。そしてプレイリストムービーの名にふさわしい音楽の数々。目や耳から取り入れる情報量が段違いに多い新世代にとって、こうした映画はスタンダードなものになっていくでしょう。若干31歳のシュルツ監督でなければ撮れない映画です。 ------------------------------------------------------------ 対して私のような「厄介な映画オタク」にとっては、どこにでもありそうな話だなという印象も否めず。アメリカの高校生活をスクリーンを通して満喫できたのは楽しかったですけど、ドラマとしては何べんも繰り返し語られてきた「定型文」で、今回大きく評価されたのは斬新な映像表現ゆえだと感じてしまいます。内面の心理描写を切り落とし、視覚的な演出による「分かりやすさ」を追求していくことが当たり前になるのも、ちょっと寂しい気がしますね。