レビュー
てっぺい

てっぺい

6 years ago

4.5


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世界一キライなあなたに

映画 ・ 2016

平均 3.9

2020年01月29日に見ました。

【筋が変わる映画】 全身マヒのウィルと、ヘルパーのルー。相入れない2人が次第に心を通わせ幸せになる映画。と思いきや、ウィルの隠れた思いにラストが胸にどっしり残り、色んなことを考えさせられる。超骨太映画で見応え満点。 ◆概要 原作は、ジョジョ・モイーズが2012年に発表し、世界40カ国以上で翻訳された同名小説。出演は「ゲーム・オブ・スローンズ」のエミリア・クラーク、「あと1センチの恋」のサム・クラフリンら。監督は本作で長編映画デビューとなるテア・シャロック。 ◆ストーリー 職を失ったルーは半年限定で介護の仕事に就き、バイクの事故で車椅子生活を送る青年実業家のウィルを担当する事に。ウィルはルーに冷たく当たるが、ルーの明るさがウィルの心を溶かし、やがて2人は互いに最愛の存在となっていく。 ◆感想 絶妙で切ない恋愛映画でありながら、描く映画の芯はとてつもなく骨太。こんなに考えさせられる映画はないと思う。悪い人間も一切登場しないので胸糞感もなく、美男美女に眼福し、ちょっとしたロードムービー要素もある。見て損のない映画。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆チャレンジ この一本を通して、一つの死の形を垣間見る。尊厳死と言うものに対して、絶対的な正解なんてないと思うけど、ウィルが誠心誠意周りに気を配り、周囲の理解を限界まで求めて迎える結論は、この映画がいかにそれを正義と作れるのか、そこにチャレンジした映画だと思った。 ◆尊厳死 まるで昨今のアイドルのように、自らのエンドまでに時間を設け、周囲に気持ちを整える猶予を与えるウィル。ルーの飛躍を望み、自分をその障害にしないよう諭し、彼女への援助の形を最後に残す。結果、ラストでは彼女にとっての飛躍の地(パリ)を笑顔で闊歩する姿を通して、ルーという人間のステップアップを描いていたと思う。ウィルが尊厳死を選択していなかったら…いかにこの映画がウィルという人間の死を尊重し、肯定しているかの一つの形が見えたラストだった。 ◆優しい演出 “朝起きて昔の自分を思い出し絶望する”と語っていたウィル。言葉だけでも十分伝わってくるその絶望感を、この映画では例えばそんなシーンを直接的には描かなかった。それは、そこまで映画を重くしたくないという製作陣の狙いであり優しさでもあったと思うけど、個人的にはそんな部分も出して心を抉ってくれても良かったと思う。 ◆ロマンス 彼氏持ちながら、次第にウィルに心を寄せていくルー。“ババ臭い”ファッションとルーを揶揄しつつも、次第に笑顔を見せだすウィル。2人のもどかしいほどゆっくりな恋愛映画のペースも良かった。個人的にはルーの誕生日パーティーでの男の静かなバトルが見もの笑。自分のネーム入りのアクセサリーと、タイツのプレゼントとしての差は男の自分でもよく分かるほど笑、ルーの心が動いたシーンだと思った。 ◆エミリア・クラーク 個人的にはジャック・ニコルソンに次ぐ、“眉毛で語る役者”な彼女。加藤ローサ似で喜怒哀楽がはっきり伝わるその表情が、快活なルーというキャラクターをよく演じきれていたと思うし、とてもキュートで見やすかった。スカートが破れる冒頭も可愛らしかったし、ウィルに死ぬ意思を伝えられる時の絶望の演技も良かった。 ◆ なんだか「最強のふたり」「人生の最高の見つけ方」を感じた本作。インスピレーションを感じながら、でも迎えるラストは大違い、というよりどの映画よりもずっしり胸に響く。また素敵な映画に一つ、出会えました。