レビュー
レビュー
ジュネ
star3.5
2020年140本目は、シリアの窮状を描いた数年前の作品がようやく公開となりました『シリアにて』。 ------------------------------------------------------------ これまでシリアの状況を描いた映画と言えば、どうしても数々のドキュメンタリーを思い出します。人の死や爆撃の様子を直接的に目の当たりにすることが多かったのですが、本作は限られた時間・空間を巧みに用いて、人々が直面する困難な状況を見事に想像させる作りになっています。舞台は決して広くはないアパートの一室であり、ここに大勢が外にも出られず暮らしています。 ------------------------------------------------------------ 水を節約し食料を食いつなぐ中、外では大きな爆撃音や銃声が鳴り響き、住人たちを心理的に追い詰め続けるのだからたまりません。一方で『娘は戦場で生まれた』でも見られたように、子どもたちはすっかり環境に順応し、携帯で音楽を聞き泣き出すこともありません。その姿がなおさら悲壮感を募らせます。主人公のオームは謂わば「女傑」で、家族を守るため皆に厳しくルールを強います。 ------------------------------------------------------------ そんな彼女がやがてある問題に対する決断の時を迫られるのですが、シリアという過酷な環境にも関わらず、あえてその場所で問われる「人間としての尊厳」に踏み込んでいくのが凄いと思いました。オームの性格についても、ともすれば不快感を覚える人もいるでしょうし、短い尺ながら中々攻めきった内容に仕上がっていて見ごたえは抜群です。
80