レビュー
真っ先に思ったことは、「ついに『2001年宇宙の旅』がアップデートされたぞ」だった。 人を人たらしてめているのは「武器」である。 キューブリックが信じてきたのは、いまでこそ鼻で笑われるようなトンデモ思想「キラーエイプ理論」だった。人類は殺し合いをしたから進化してきた、すなわち、あの有名な「投げた骨が原子力衛星になる」史上最大のジャンプカットに、「人間とはなにか」を集約させていたわけだが、本作『メッセージ』ではその考えにノーを突き付けた。人類にとっての最大の武器は「言語」であると説いているのだ。つまり「対話」の力である。 モノリスが「殺すための武器」を与えてくれたことの対比として、モノリス風の宇宙船に乗ってきたヘプタポッドは「救うための武器」を授けてくれたわけだ。そして3000年後の未来に、地球人と「対話」することで自らの平和が望めると教えてくれる。なんて素敵な共存関係だろう。 そしてこのwin-winの関係は「非ゼロ和ゲーム」であり、「ゼロ和ゲーム」の象徴である麻雀的思考に支配された中国が、率先して友好を築くなんて、これもまた粋な発想である。 それから「時間の流れ」に逆らった存在を、「記憶」としてビジュアライズしたことは凄まじい、という凡庸な感想も付け加えておく。
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