レビュー
dreamer

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4 years ago

5.0


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西鶴一代女

映画 ・ 1952

平均 4.0

この映画「西鶴一代女」は、17世紀、江戸時代中期の井原西鶴の名作「好色一代女」を、名シナリオライターの依田義賢が脚色した、巨匠・溝口健二監督の代表作の一本だ。 もう老残に近い年齢で街娼をしているお春(田中絹代)という女が、荒れ寺の百羅漢を眺めているうちに、その仏像のひとつひとつが、かつて自分と関係のあった男の顔に見えてくる。 こうしてお春は、男性遍歴の一生を回想することに----。 侍の娘で、京の御所に勤めていたお春は、公卿の若党(三船敏郎)と愛し合っているところを、役人に摘発され、不義者として両親ともども洛外追放の身となる。 若党は「お春さま、真実に生きなされ!」という遺言を残して打ち首になった。 その後、お春は、奥方に子供が生まれなくて困っている大名の側室に召しかかえられた。 殿様がお春に夢中になると、お春も存分に尽くした。あげく、殿様は房事過多で病気になり、彼女は生んだ子を残してお払い箱になってしまう。 次に、お春は島原の廓に身売りし、大金持ちの田舎者(柳永二郎)に身請けされようとしたが、この男はニセ金づくりで、その場で役人に逮捕されてしまう。 そして、お春は次には堅気の大商人(新藤英太郎)の家の女中となる。 ところが、この主人が好色でお春に目をつけ、奥方(沢村貞子)に嫉妬され、いじめられ、この家を飛び出してしまう----。 やがて、お春は乞食にまでおちぶれ、街娼たちに誘われて街の辻に立つようになる。 そんな、ある日、母親が彼女を訪ねてくる。お春の生んだ子が大名になって、お呼び出しがあったのだという。 喜んで行ってみると、大名の生母が街娼にまで身を落とすとはけしからん、と永の蟄居を命ぜられたのだった。 お春は一目だけでも我が子に会わせてくれと言い、息子の姿を眺めながら身をくらましてしまったのだ。 そして、尼となって巡礼しているお春の姿でこの映画は幕を閉じる。 優雅に、悲劇的に、ユーモラスに、そして全体に一本、男性本位の封建社会に対する痛烈な抗議の筋を通して、溝口健二監督は悠々とこの物語を描いている。 お春を演じた主演の田中絹代も"凛とした気迫"をたたえた好演で、芸達者の俳優たちが、入れ替わり立ち替わり現われて、厚味のある場面を作り出していると思う。 そして、隅々にまでよく神経の行き届いた美しいセット、流麗な白黒映像の粋とも言うべきカメラなど、あらゆる面での技術的な水準の高さが渾然一体となり、稀に見る"映画の美"を生み出していると思う。 この「西鶴一代女」は、日本映画史上において、ひとつの頂点を極めた作品だと思う。 そして、溝口健二監督の得意とした長回しが、最高に効果を発揮して、数々のヨーロッパ映画にも影響を与えたのだと思う。 尚、この作品は1952年度のヴェネチア国際映画祭で、国際賞を受賞しています。