レビュー
【読めるサスペンス】 身近なスマホが乗っ取られ、陥れられていく“誰にでも起こりうる恐怖”が実にリアル。その“なりすまし”を巧みに落とし込んだ見事な原作力ながら、サスペンスとしてここまで読める映画も珍しい。 ◆ 志駕晃の同名ミステリー小説映画化作品。監督は「リング」の中田秀夫。出演は北川景子、千葉雄大、成田凌、田中圭ら。 ◆ 彼氏に電話をかけるも、声の主は彼氏のスマホを拾った人物だった。その日から麻美の身に、麻美のさまざまな個人情報が彼氏のスマホからの流出を疑う事象が起きる。一方その頃、ある山中で若い女性の遺体が次々と発見される事件が起こる……。 ◆感想 もはや触らない日はないスマホ。タイトルの通り、まさにスマホを落としただけで、個人情報の流出やストーカーの恐怖、幾重にも被害に巻き込まれていく様がリアルそのもの。 ◆以下ネタバレ◆ “なりすまし”がこの映画の一本のテーマ。なりすましでスマホの闇にどんどん巻き込まれていく麻美と、麻美自身が抱えるなりすましの闇。この二つが共存する、話の骨組みとしてはとても興味深いものだった。原作はしっかりしていると思う。 ただ、それを映画化するとなった時、ここまで先が読めてしまうと見ている側のドキドキ感が足りない。とてももったいないと思う。犯人像を始めからチラ見させるのであれば、全くの大どんでん返しがなければ。 本物の麻美が何故ミナヨに自分の人生を譲る決断に至ったのか、ミナヨが何故麻美として生きる事を決めたのか、動機付けの描写がなかった事は、残念ながら製作側のミスだと思う。 なりすましの被害と自分自身が抱えるなりすまし、この共存が面白い部分。ラストで次の被害に遭っていく、“誰にでも起きうる普遍的な恐怖”を訴えるのもいいけど、実は彼氏にもなりすましの過去が…みたいなのでも良かったかも知れない。 蛇足ながら、「リング」の中田監督なだけに、犯人の姿がほぼ貞子にしか見えなかったのは、監督の遊び心か、製作陣の仕掛けた風刺か。
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