
Till

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平均 3.2
鬼才デヴィッド・クローネンバーグの実の息子であるブランドン・クローネンバーグの長編2作目となったSFスリラー。 タシャ・ヴォスは殺人を請け負う企業にプロの暗殺者として勤めている。特殊なデバイスを用いて標的に近い人物の意識に入り込み、人格を乗っ取っとってターゲットを仕留めた後、自殺をして身体から“離脱”する。タシャはこの遠隔殺人システムで速やかに任務をこなしていたが、あるミッションを機に彼女の何かが狂い始める…。 『インセプション』や『攻殻機動隊』を思わせるSF設定であるが、そこは流石クローネンバーグの息子、やっぱり全体的にイカれてる。R18+の年齢制限を受けていることからも察せられる通り、バイオレンス描写がかなり強烈。「臓器」や「断面」などのグロテスクではないが、とにかく暴力的で痛々しい。ただやはりそのなかにも、「装置」の独創的なデザイン、意識に潜入する際のエキセントリックな映像など随所に「芸術性」が感じられるあたりもクローネンバーグっぽい。こういった演出面に関しての才能は確かだと思う。 一方でストーリーは至って凡庸。何か心に響くものもなければ、納得のいく話でもない。特に人物描写が浅く、主人公はなぜ殺し屋として働くようになったのか、彼女なりの「正義」は何なのか、といった設定がほぼ描かれない。これを「余白」と捉えるかは人それぞれだが、私には単に「説明不足」に思えてしまった。そもそもこの暗殺企業自体も単なる営利目的で殺人を行っているだけで、操られる人間もターゲットの人間も決して悪人ではない。つまり完全なる「悪」側の視点で物語が展開されるので、感情移入も難しい。ストーリーもざっくり言えば「殺し屋が真の殺し屋に目覚める」という「悪」が「悪」で終始する救いようのないお話。もちろん殺人を肯定しているわけではなく、それを「狂気」として描いているとはいえ、いくら何でも普遍性に欠けるだろう。 というように決して万人に薦められる作品ではないが、一定層には確実に受けるカルト作品であることには間違いないです。