少女マンガ家にSFは書けないね。 主人公以外の感情の動きが雑すぎる。翔が特にひどい。物語を進めていくための装置でしかない。母親が自殺したから、それを悔やんで後追い自殺ってその設定は安易すぎる。多感な時期ってのを差し引いてもちょっと無理があるのでは？　というのも、この翔くんわりと精神的には安定している。いつ自殺してもおかしいってくらいの精神状態ではない。友達もいっぱいいるし、スクールカースト上位組で、申し分のないスクールライフを送っている。おばあちゃんもいる。彼が精神的に荒れる状況がほぼない。この状態で自殺したいってのは、悲劇のヒロインに浸ったかまってちゃんにしか見えない。お母さんからのメッセージがきっかけで自殺に踏み込んだようだけど、あのメッセージを聞いて死にたいと考えるのだろうか。お母さんに謝ってくるって言ってたけど、自分の人生を擲って、謝りたいことなのだろうか。例えば、母の死で荒れて、友達とも距離を取り、母の辛辣なメッセージを聞いて自暴自棄になるとかならわかる。でも、彼の周りは常に心配してくれる友達がいる。自殺はしないでしょ。 そして、謎のSF要素。未来の手紙が届けられたってのは100歩ゆずろう。何故その手紙が届けられたのか、説明は一切ないけど、それも置いておこう。多元宇宙というかパラドックスも良しとしよう。 でもさ、変えられない過去のために手紙を送るって女々しくない？ 違う未来で翔が生きてようと死んでようと関係なくない？ 大切にしなければならないのは現在でしょ？　その手に抱いてる子どもの未来の方が大事じゃない？ 未来が変わって、菜穂と翔が付き合いだしたら、その子どもってどうなるの？　旦那はどんな感情で手紙を書いたのかな。 菜穂は翔のことしか見えてなさすぎる。過去に手紙を送るということは現在を否定していることに他ならない。今の旦那との思い出を大切にするべきだ。この作品は死者に囚われすぎている。人間ってもっと強かで、ずる賢い生き物だ。だって、現に菜穂は翔の友人の弘人と子をなしているじゃないか。 過去で弘人との仲を匂わせるようなシーンがあったならいい。そうすれば、弘人と結婚する未来が見えるし、自分がお腹を痛めて産んだ子と出会えるではないか。なんだか今のままだと弘人と子どもの存在が可哀想でならない。 モブキャラも生きた人間だぜ。もう少し優しく扱ってあげてほしい。あと、SF要素を加えるなら、もっと上手くやってほしい。あんまり都合いいとつまらないからね。あと、普通科の学校でパラドックスの話しを授業でやることはまずないと思うよ。