レビュー
ジュネ

ジュネ

8 years ago

5.0


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ファントム・スレッド

映画 ・ 2017

平均 3.5

見終わったあとはしばし呆然として引きずってしまった程で、PTAの才能の凄まじさ・存在の大きさを改めて知らしめる傑作です。2018年はまだ半年も経っていませんが、こと完成度という一点において、本作を凌ぐ作品は今年はもう出てこないでしょう。 とにかく全編を通じ、「一体どうやったらこんなに美しい構図や画角をカメラに収めることができるの?」と思わせるシーンの連続で、二時間かけて美術館を一周させられたような恍惚とした感覚に襲われます。決して映えた顔立ちではなく、序盤で本人が口にするようにセクシーな体つきではないアルマですが、ドレスを纏った彼女を如何に美しく魅せるかをPTAは徹底的に計算しています。 ワンシーンごとの人物の配置、後ろに写りこむカーテンや調度品の位置、ドレスと背景の色彩のコントラスト、果ては人物の顔にかかる陰影や輪郭の相似に至るまで、偶然とは思えない現象の連続に序盤から驚きが止まらず、一挙に魅了されました。 主人公のレイノルズは仕事のことしか考えられない融通の効かない人間として描かれますが、これはまさしくPTAその人であり、役柄に徹底して没入するダニエル・デイ・ルイスその人に他なりません。本作で引退とは残念でなりませんけれど、確かにこんな作品で錦を飾れたら、俳優にとってこれ以上の名誉はないかもしれません。