レビュー
主人公のトムは常に結果、成果を求めてきました。開業医を営み、患者からも信頼された医師としての生活はその現れでもあります。冒頭、名門大学もやめて放浪の旅に出る息子ダニエルと、トムが車内で軽い口喧嘩になります。トムは「お前には無意味に思えるかもしれないが、これが私の選んだ人生だ」と告げる。トムは生き方も自分の努力で掴みとるものと考えているわけですね。ところがダニエルはこれに対して「生き方は選べないよ。ただ生きていくだけだ。」と返す。トムにはこの意味が全くわからない。 トムはその意味を探すためにも、死んだ息子の遺灰と共に整地巡礼の旅に出ますが、ここでも彼は同じなんです。人のことなど脇目もふらず、一心不乱に歩き続ける。彼にとっては最終目的地、ゴールに付くことが全てだからです。でも旅を続け、様々な人と出会い会話を交わし、食を景色を楽しむうちにダニエルの言いたかったことがわかってくる。映画の本当に本当の最後、父と息子が再び交わす会話はその象徴です。 目的や意義をもって人生を歩き、そこにたどり着ける人は実はほんの一握りです。多くの人々は何の目的もなく歩き続けるだけ。でもその間にどれだけ実りの多い経験ができるのかがとても大事なことなんですね。それによって人は最終的に自分の弱さを認めて「受け入れる」ことができるようになるのではないでしょうか。 私はまだまだこの考えを理解できない、結果主義の青二才のようで。最後の彼らを見て「成長しろよ!」と憤ってしまいます。またいつか年を経てから噛み締めたい一作です。
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