
uboshito

ユンヒヘ
平均 3.6
2025年11月27日に見ました。
この作品のすばらしさは、「決して送られるはずのなかった手紙」を、第三者(木野花)が勝手にユンヒに送ってしまうところから物語が始まる部分で、さらにそれをユンヒではなく、ユンヒの娘が勝手に読んで、母親をジュンに会わせようと小樽旅行を提案するところだと思う。もうこれだけでこの映画は完成されたと言っても過言ではないかもしれない。 まあ…普通に考えたら、書きはしたけど到底送ることなどできない、と思っていた手紙を勝手に送ってしまうだなんて、家族の中にも何とやら、であり得ないはずなんだけど、木野花は姪を、娘(セボム)はユンヒを「いつも寂しそうにしている」と感じていて、そのことを気にかけている優しさからしたことで、あまり責める気にはなれない(そうしないと映画は動き出さないし)。実際、人生を諦めてしまったような二人の姿は、この世界がとても窮屈で、不寛容であることを示しており、それぞれに寄り添う木野花とセボムの振る舞いは、静かな救世主のような雰囲気でさえある。 ジュンが住む街だと知っている小樽に旅行に行きたいのに休みもくれないブラック職場を勢いで辞めるユンヒ。ユンヒの娘も、無理に母をジュンに会わせるのではなく、木野花に最初に相談するあたりもなかなかにすてきだった。ユンヒの娘の彼氏の話は正直不要だが、ユンヒの娘はセクマイではないと制作側が示しておきたかったのか(その意図までは不明だけど)、彼がいないと画面が全部女性になってしまうからか。 そう、セクシャリティの話は、この映画では実はほとんど重要ではない。かつて当たり前に好きになり今も忘れられないでいる人がいる。もう音信も不通だけど時々夢に見る人がいる、という人には是非観てもらいたい映画。ラスト、ユンヒの元夫とのやりとりから、ユンヒが再就職先の店の前で緊張しながらも見せる笑顔には、胸が締め付けられた。人が、再生に向けて一歩を踏み出す姿はやっぱり胸が熱くなる。 【視聴:Amazon Prime】