レビュー
キム・ギドク監督がヴェネツィア国際映画祭で金獅子を獲得した記念すべき一作で、従来の作品と比べてだいぶ見やすいサスペンスに仕上がってはいるものの、冒頭から終盤に至るまで衝撃の行動に走り続ける血も涙もない主人公は、いくら母親に捨てられたトラウマがあったとしても到底感情移入できるキャラクターではありませんし、『女は無償で男を愛す聖母』というキム・ギドクが一貫してかかげるメッセージは女性からしたらヘドが出る時代錯誤感ゆえ、間違いなく万人に勧められる映画ではありません。 一方で、あまりに常識を超越した描写の数々は深刻どころか最早コミカルで笑いが込み上げてくるほど面白く、終盤で自らの魂の救済を求めて『地獄行脚』を行う主人公の凄まじい決断は、一晩たっても目に焼き付くほどのインパクトです。 私のようにありふれた映画に飽きた人ほど、彼ののオンリーワンの世界観は魅力的に映り、実に刺激的な体験のできる充実した時間でした。
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