レビュー
2020年106本目は、気球にのって西ドイツへと決死の逃亡を果たした実話を映画化『バルーン 奇跡の脱出飛行』。 ------------------------------------------------------------ 事件からわずか3年後にディズニーが作った『気球の8人』をリメイクした一作で、厳しい抑圧から逃れようとする一家と、彼らを追いかける東ドイツ警察の息詰まる攻防をスリリングに描いています。主人公ペーターの親友で実際に気球を製作したギュンター氏はご存命で、彼のサイトでは当時の青写真を見ることができるんですが、気球は色合いも含めてそのままそっくりに再現されています。 ---------------------------------------------------------- 本作では緊迫感の追求と共に、不可能なミッションをチームワークと絆で乗り越える娯楽性に重きが置かれており、背景の掘り下げはあまり成されていません。ドイツ国民にとっては周知の事実ではあるものの、当時、西への亡命をはかって逮捕された東ドイツ人は75000人にのぼることを改めて知っておく必要があるでしょう。5年の懲役刑となるケースもあり、壁が崩壊したのがたった30年前のことだとは今もって信じられません。 ------------------------------------------------------------ 皮肉にも現在のドイツは「移民排斥」の波によって再び分断の時を迎えています。奇しくも本作は東西ドイツ統一の28周年を記念するその日に上映されました。中には「忌まわしい過去を掘り起こして水を差すな」と批判する声もあったようですが、過去を見つめ直すことで今を反省できなければ、また同じ過ちを繰り返すだけでしょうね。
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