レビュー
胸に刺さる映画でした。 80人の命と目の前の1人の少女の命を天秤にかける。恐ろしい選択だ。そんなことがあってはならないけど、その決断を下さなければならないなら、どちらを選ぶか。 テロリストが潜伏している家に遠隔操作のミサイルを撃ち込むことに。その判断の直後にある少女がその家の前でパンを売り始める。もし、ミサイルを撃ち込めば少女を巻き込んでしまう。しかし、今まさにテロを決行しようとしている彼らを野放しにすると、甚大な被害が出るのは確実だ。撃つかどうか揺れ動く官邸。 全てがリモートだ。現地にいる兵士は二人だけ。それなのに、この手に汗を握る展開。常に緊張が張りつめていた。見事なシナリオでした。 常にハラハラさせられる。観客は登場人物と気持ちがリンクする。少女を死なせたくない。彼女を思うと涙がこぼれそうになる。あのあどけない笑顔を観ると絶対に死なせてはならないと思うよね。 アメリカの対応は非常に冷酷だ。やはり常に戦争をしている国は違う。しかも、アメリカは民間でもテロの被害が出ているし、テロリストに対する判断は潔い。 しかし、ミサイルの引き金を引くイギリスの兵士はそう簡単にはいかない。その引き金でなんの罪もない少女の命をも奪う決断をしなければならない。その判断の責任は彼だけではなく、様々な立場の人にのしかかる。どんな判断であれ、一生涯背負わなければならない十字架になる。 だけど私は思うのだ。そこで迷うべきなのだ。80人の被害が出るよりも1人の少女の死の方が少ないから良いのだと即決し、あの少女をなんのためらいもなく殺してしまってはならない。人の死を数で比べていいはずがない。あの子に80人が死ぬよりましでしょ? ごめんね。許してね。なんて言えるはずがない。 戦争なのだ。人の生死がかかってくるのは当然なのかもしれない。だけど、そこで迷わないのは、人として生きていく上で捨ててはいけない倫理観なのではないだろうか。 重たいメッセージと問題提起を投げ掛けた作品だった。
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