レビュー
若き天才グザヴィエ・ドランの放つサスペンススリラーで、今回も彼の尖りまくったセンスと才能がそこかしこに爆発しているような、非常に見ごたえのある一作でした。 閉鎖的な小空間、同性愛、母性、原作は戯曲‥とドランの作品に共通する要素がこれでもかと散りばめられていますが、決して無駄を感じさせずむしろスマートにまとめきっているのが本気で凄いと思います。単純にストーリーをなぞってみると、展開は実のところ単調で裏表もないですし、下手な人が手掛けたら退屈な凡作に成り下がってしまいます。 ところがこの人は絶妙な間や演者の表情を用い、服装や背景から部屋の内装に至る細部にまでヒントを散りばめて、観客に幾通りもの答えを「想像させる」ことで映画を完成させるのです。 またそれがタルコフスキーのような果てしない難解さでもなく、ニコラス・ヴィンデイング・レフンのような自己陶酔も感じさせない丁度よさ。この手の、映画が本来持っていたはずの楽しさを味わせてくれる・思い出させてくれる作り手って実は今じゃ珍しいタイプだと思います。
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