
dreamer

荒野の決闘
平均 3.4
この映画史に残る不朽の名作「荒野の決闘」は、保安官ワイアット・アープ兄弟と無法者クラントン一家の、宿命的な対決を描いた作品だ。 ジョン・フォード監督は、格調高い演出で"詩情の漂う人間ドラマ"を作り上げていると思う。 この作品は、「駅馬車」「シェーン」と並び称される、西部劇の傑作中の傑作で、アメリカ映画の大きな誇りであり、財産だと思う。 同じ題材を映画化したジョン・スタージェス監督の「OK牧場の決闘」が、講談調の興趣を盛り上げていたのに対し、ジョン・フォード監督は、事件を背景に流して、もっぱら人間関係に描写を傾け、主人公ワイアット・アープとドク・ホリデイの人間性を追求していると思う。 鼻の下に野暮ったい髭をはやしたヘンリー・フォンダのワイアット・アープは、今まで数多くの西部劇に登場した人物の中でも、最も素敵で最も魅力的な人間像になっていると思う。 そして、クライマックスのOK牧場での決闘場面は、凄絶感を漲らせた描き方が、実に見事だ。 「OK牧場の決闘」が拳銃、ライフル、ショット・ガンを使い、長時間にわたって派手な乱戦を展開していたのに対し、この「荒野の決闘」では、わずか3~4分で戦闘は終了する。 その短い時間の中で描き出される死闘は、極めて凄絶だ。 ワイアット・アープ派もクラントン一家も、いずれもひとかどの拳銃使いが揃っている。 発砲したら、相手を仕留めずにはおかないといった連中ばかりだ。 だから、やたらとドンドンパチパチと撃ったりはしない。 あくまでも、一発必殺を狙って撃つのだ。 そういう緊迫感が、リアリズムに徹した手法で描き出されており、右往左往する牛の群れに妨げられて、思うように発砲出来ないという焦燥感も、うまく描いていたと思う。 特に優れているのは、柵から飛び出してライフルを撃ちまくるアイク・クラントンの前を、一台の馬車が砂煙をあげて疾走して行く場面だ。 ライフルを撃ちまくったアイクは、やがて、一弾を浴びて崩れるように倒れていく。 その時、視界を遮っていた砂煙が薄らぎ、向こう側に拳銃を握って仁王立ちに立っているワイアット・アープの姿が、くっきりと浮かび上がってくる。 このあたりの斬新で鋭い描写は、ジョン・フォード演出の真髄とでも言えると思う。 こうして、クラントン一家を倒したワイアット・アープは、片思いの女性クレメンタインに別れを告げて、故郷へ帰って行く。 白く長い道を遠ざかるワイアット・アープ。その姿をいつまでも見送るクレメンタイン--------。 その画面に流れる、"いとしのクレメンタイン"のメロディ。 ほのかな感傷とわびしい情感のにじむラストシーンこそ、名匠ジョン・フォード監督が高らかに謳い上げた、"荒野の詩"であると思う。