レビュー
直近で劇場公開された新作をレビュー、今回取り上げるのは『聖なる犯罪者』。アカデミー外国語映画賞のポーランド代表にも選出されました。 ------------------------------------------------------------ ダニエルは自らが聖職者になることを夢見るほど熱心なキリスト教信者です。演じるバルトシュ・ビィエレニアの「顔面力」がとにかく凄まじく、見開かれた目に宿る狂気には吸い込まれてしまうようです。神父になりすましたは良いものの彼は本物のド素人ですから、冒頭から行き当たりばったりの思い付きで何とか急をしのぐ場面の連続。 ------------------------------------------------------------ 序盤は「いつこの嘘がバレてしまうんだ?」とハラハラさせられる、サスペンス的な要素でグイグイ引っ張っていくんですね。しかし中盤に差し掛かってコミュニティの抱える暗部が暴き出されると、信仰の意義とは何なのかを考えさせられます。この小さな社会では宗教も権力と癒着して完全に「世俗化」してますし、人々もよく知る神父や自分にとって都合の良い教義のみを「形式的」に信じてるに過ぎないんです。 ------------------------------------------------------------ でも本当の信仰は形にとらわれず自分の心に従って信じたときに現れるはず。ダニエルは犯罪者ですけれど、先入観なく自らの信心にのみ従って行動するという点で、やっぱり説得力が全然違うわけです。面白いのは布教活動を行う内にダニエル自身も浄化されていく点で、彼の内面の変化を序盤と終盤の「セックスシーン」でストレートに表現して見せるのがユニークでした。 ------------------------------------------------------------ 設定だけ見れば「ありがち」と匂わせながらも、人間の善悪と宗教の関わりを深く描いた、秀逸なドラマに仕上がっていると思います。
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