レビュー
これはすごく面白かったです。認知症の老人が、足元もおぼつかず、震える手に銃を携えて、ひたすら家族の仇(やはり老人)を探し回るという、半ばシュールなコントのような展開。不意に記憶がリセットされ、頼みの綱は施設の友達が描いてくれた、やるべき事をしたためた手紙。「メメント」の変奏曲のよう、というか、認知症ノワールというジャンルがここに爆誕。ユーモアと緊張感が同居し、全編を不思議な不穏さ、危うさが彩ります。C.プラマーの巨大な存在感と的確な演出で、全く飽きさせません。下手に思わせぶりな回想シーンを入れるでもなく、随所に戦争やアウシュビッツを連想させるものを自然に登場させるのもすごく上手い。アウシュビッツは重要なモチーフだけど、それに引っ張られすぎず、エンタメになってるのもいい。 中盤を過ぎて、ある一線を越え、増した緊迫感は終盤でピークに。そして、えっ!という幕切れが鮮やか。結末を予想できる人はいるだろうけど、僕の予想とは違いました。で、幕切れ直後、原題"REMEMBER"が出ます。誰が、何を覚えていたのか。失われゆく戦争の記憶と、決して忘れられない戦争の記憶。それらに思いを馳せると、不思議な胸苦しさが。 認知症の症状って、一般的には昔のことは覚えてるけど、まあ、そこはちょっと引っ掛かったかな。
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