レビュー
hanako

hanako

3 years ago

4.0


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羅生門

映画 ・ 1950

平均 3.5

2023/7/8 藪の中で見つかった遺体を巡るミステリータッチのヒューマンドラマ。 事件の当事者である3人が三者三様の証言をし、真相が分からないという煙に巻かれるような話。 この不可解な事件について、豪雨の降りしきる羅生門の下で杣人、坊、それに加えて下人の3人が語り、人間の本質を浮き彫りにしていく。 芥川龍之介の「羅生門」だと思っていたら、大筋は「藪の中」のストーリーをベースにしている作品でした。 是枝監督の「怪物」の解説で、物語の構造が同じ作品としてこの「羅生門」がよく登場するので、関連作品として観ました。 ◆ 割ともったりしたシーンが多いのですが、それをも観客に退屈せずに見せるカメラワークや音楽による演出が素晴らしく、流石、の一言。 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆(ネタバレ含む) ◆ ◆ ◆ ◆ 冒頭、杣人が「ちっとも分かんねぇ」と言っているのは、事件の真相ではなく"なぜみんなが嘘をついているのか”という事だったんですね。 かく言う杣人もまた、事件現場から高価な小刀を持ち去り、事件の真相を知っていながら黙っていたので、罪深き人。 当事者たちの三者三様の嘘も、各々の情けなさを隠す虚栄心からくるもので、いかに人間とはエゴに満ちえているか。「世の中そんなもんでしょ、鬼よりも人の心が恐ろしい」と、ある意味達観した下人と、「人という人を信じられなくなったら、この世は地獄だ」と性善説の立場を取りたい僧。雨の降りしきる羅生門の下で僧が打ちひしがれる中、捨て子の赤ちゃんを巡っての最後のやり取り。 赤ちゃんの着物を剥いで雨の中逃げていく下人は小説「羅生門」の切り取り?(「外には、ただ、黒洞々こくとうとうたる夜があるばかりである。下人の行方は、誰も知らない」)。 この絶望で終わらせず、赤ちゃんを引き取ると申し出る杣人と、絶望の中に僅かな希望を見た僧、それに呼応するかのように晴れ渡る空。希望を残したラストはいいですね。(でも、この杣人、途中で赤ちゃん捨てるのではと疑ってしまったのは私だけではないはず。それだけ疑心暗鬼になってしまう映画)。