
てっぺい

ぼくのお日さま
平均 3.8
2024年09月14日に見ました。
【ぽかぽか映画】 感情の機微を、余白を持たせて見る者の想像力を掻き立てる見事な脚本。演じながら、子役の演出も担う池松壮亮の技量も見事。美しい情景も満載で、お日さまの光に包まれるように、心がぽかぽかしてくる一本。 ◆トリビア ○一般的に90分の映画で台本は50頁以上になるが、撮影監督出身の奥山監督が書き上げた本作のそれは30頁程度。監督は相談した池松壮亮から“撮影しながら余白を埋めていきましょう”と提案された事が心強かったという。(https://radiko.jp/share/?t=20240908180000) 〇監督は、スケートのシーンについて、池松に渡していた台本は『だんだん上達していく3人』程度の薄いものだったことを明かし「池松さんがコーチっぽい言葉をアドリブで言ってくださって、それに2人が応える形で、ドキュメンタリーを撮っている感じでした」とその貢献ぶりを称賛した。(https://bokunoohisama.com/news/2691/) ○監督は、子役には台本を渡さず現場でセリフを伝える演出手法。監督曰く、池松壮亮は演技と同時に撮影中の子供達の演出も担ってくれていたという。 (https://radiko.jp/share/?t=20240908180000) 〇池松壮亮は本作のためにスケートを半年間猛特訓。本人曰く、「想定ではもっと上手くなれるつもりだったんですが、なかなか上達しなかったですね。」(https://eiga.com/news/20240722/8/) 〇タクヤを演じた越山敬達は、台本が渡されず、物語がわからないままの撮影を塾考し“自然体がいいから”と自分なりにたどり着いたという。「どれだけ自分の自然な形でタクヤを演じられるかというところに重点を置きましたし、初めての主演映画だったので、どれだけ撮影を楽しめるかということも意識しました」(https://eiga.com/news/20240722/8/) 〇監督はスケートシーンも自身で滑りながらカメラを回したという。色んな撮り方を試したが臨場感が足りなかったといい、「そうやって自由に撮っていくのが一番この映画に緩急がつくし、撮りやすかったのです」と語る。(https://eiga.com/news/20240722/8/) 〇本作はハンバート ハンバートの楽曲「ぼくのお日さま」に奥山監督が着想を得て製作されている。ハンバートハンバートは他の依頼を何度か断ってきたが、監督からの手紙に、熱意、真剣さ、誠実さが伝わってきて快諾をしたという。(https://bokunoohisama.com/news/2691/) 〇ハンバートハンバートの佐藤良成が本作の音楽も手がけている。(https://bokunoohisama.com/introduction/) 〇ハンバートハンバートの佐藤は、映画の終盤でタクヤが見せる表情に触れ「それを見て胸がいっぱいになって…。本当に良い映画に出会えてよかったなと、こっちの方が感謝です」と語った。(https://bokunoohisama.com/news/2691/) ○ 本作は第77回カンヌ国際映画祭の「ある視点」部門で上映され、大きな反響を得た。映画祭ディレクターのティエリー・フレモーは奥山を、「次世代の是枝裕和」と紹介したという。(https://eiga.com/news/20240722/8/) ○ロケ地は、北海道小樽市や苫小牧市、後志管内赤井川村など道内各地。(https://www.hokkaido-np.co.jp/article/1010839/) ◆概要 2024年・第77回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出展作品(日本人監督として史上最年少)。 【監督・脚本】 「僕はイエス様が嫌い」奥山大史(同作で第66回サンセバスチャン国際映画祭の最優秀新人監督賞受賞・本作で商業映画デビュー) 【出演】 池松壮亮、越山敬達、中西希亜良、若葉竜也、山田真歩、潤浩 【主題歌】 ハンバート ハンバート「ぼくのお日さま」 【公開】2024年9月13日 【上映時間】90分 ◆ストーリー 雪の降る田舎町。ホッケーが苦手なきつ音の少年タクヤは、ドビュッシーの曲「月の光」に合わせてフィギュアスケートを練習する少女さくらに心を奪われる。ある日、さくらのコーチを務める元フィギュアスケート選手の荒川は、ホッケー靴のままフィギュアのステップを真似して何度も転ぶタクヤの姿を目にする。タクヤの恋を応援しようと決めた荒川は、彼にフィギュア用のスケート靴を貸して練習につきあうことに。やがて荒川の提案で、タクヤとさくらはペアでアイスダンスの練習を始めることになり……。 ◆ ◆以下ネタバレ ◆ ◆情景 野球をしているタクヤに雪が降り注ぐ冒頭。雪が積もり、解けるまでの期間で紡がれる本作の始まりにまさに相応しい映像からタイトルへ。タクヤが友達と歩いた道で雪に埋もれた郵便ポストは、新緑の季節には見晴らしの良い背景に目立つ赤色に。3人が戯れた天然のスケートリンクは、雪解けの季節に美しい大池に姿を変える。美しさで言えば、監督が「リトルダンサー」('00)の照明にインスパイアされたという、さくらが1人でフィギュアを踊るラストシーンも素晴らしい。本作を通して紡がれる淡い恋の物語に添えられるように、美しい情景が効果的に差し込まれ息を飲むような感覚だった。 ◆トライアングル タクヤが初めて踊るさくらを見た時の衝撃は、淡く温かい光の照明が施され、さくらがタクヤにとってまさに“ぼくのお日さま”な演出。さくらの荒川への憧れを示すシーンは間接的にいくつかありつつ、さくらの練習曲が「月の光」(後半で荒川の現役時代の使用曲だった事が分かる)である事が最も憧れを如実に示す事実となっていた。荒川は荒川で、タクヤの指導が明らかにさくらのそれと違い、“まっすぐなタクヤの恋を応援してあげたい”的な彼のセリフからは、今の彼の境地に至るまでに(直接的な表現こそないものの)おそらく彼自身が同じような恋を昔経験していた事を想起させる。この3人のトライアングルを説明っぽくせずに脚本した監督も素晴らしければ、現場で子役2人を導きながら自身の演技をこなしたという池松壮亮の技量に改めて驚かされる。 ◆ラスト キャッチボールのミスと合わせて“ごめん”と恋の不成就を謝罪する荒川。その後1人でやはり「月の光」を踊るさくらの姿は、荒川への憧れを未だ拭えていない映画表現か。2人が各々の道を歩む中、残るタクヤはさくらに遭遇する。タクヤが大事に抱えていたのは荒川から譲り受けたスケート靴であり、つまり彼は一度諦めたフィギュア(さくら)を、新入生のブカブカの制服、つまり新たな気持ちで始めようと歩んだ、それは矢先の出来事。そう、“大事な事を言おうとすると、言葉がのどにつまる”。監督がインスパイアされたという主題歌の「ぼくのお日さま」の通り、タクヤがとても大切な事をさくらに伝えようとしたところでエンドロールへ。監督は“説明しすぎず、観客のそれぞれの物語にする余韻を作りたかった”と語っている。その後を考えるなら、タクヤはアイスダンスを再開したいとさくらに告げ、さくらは一度は断った後で…。そんな事を考えている時点で、監督の術中にハマっているというわけである。 ◆関連作品 ○「僕はイエス様が嫌い」('19) 奥山監督の代表作。監督の実体験をもとにした作品。プライムビデオレンタル可。 〇「リトルダンサー」('00) 監督が自身、映画の原体験だと語る作品。主人公が躍るクリスマス・イヴのシーンには、本作の照明もかなり影響を受けているという。楽天TVレンタル可。 ◆評価(2024年9月13日現在) Filmarks:★×4.2 Yahoo!検索:★×3.6 映画.com:★×4.1 引用元 https://eiga.com/movie/101337/