レビュー
【エンドロールが足りない映画】 映画のメッセージが、ラストのほんの数フレームに詰まっている。直後ジワジワくる自分の頭の中での映画の回想に、エンドロールの長さが足りない! ◆ 監督は「三度目の殺人」「海街diary」の是枝裕和。日本映画としては21年ぶりとなる、第71回カンヌ国際映画祭最高賞のパルムドール受賞作品。出演はリリー・フランキー、樹木希林と是枝組常連のキャストに加え、安藤サクラ、松岡茉優など。 ◆ 足りない生活品を万引きで賄う家族はある日、身体中傷だらけの幼い少女を見つけ、娘として育てることにする。だが、ある事件をきっかけに家族はバラバラに引き裂かれ、それぞれが抱える秘密と切なる願いが次々と明らかになっていく──。 ◆◆以下早々にガッツリネタバレ!◆◆ 血は繋がっていなくても、絆と愛情と、そして万引きで繋がってしまう家族。大きな抑揚こそないものの、しずかに力強く、ツギハギながらも真の家族の形が描かれる。考えさせられるラストに、エンドロール中の自分の頭がジワジワと映画を回想して、それがとても短く感じてしまう。 ゆり(佐々木みゆ)の、ホントに映画最後のほんの数フレームがこの映画の全てを語っていると思う。治(リリー・フランキー)が自分を見つけてくれた廊下で、おそらくあの時の事を思い出しながら少し身を乗り出そうとするゆり。どんな形であれ、愛と絆のある形こそが家族であって、それこそが、邪念のない子供が自然と欲する方向。それを象徴するとても印象的な数フレームだったと思う。 またこれは、いろんな意味でほぼ信代(安藤サクラ)の映画だと思う。この家族の形を作ったのはきっかけこそ治だったものの、祥太もゆりも、子を産めない体の信代が望んだもの(直接的には描かれていない)。そしてそれを解散させる結論を出すのも信代。その役どころの強さに加えて、安藤サクラの熱演も光る。ラストの泣きの演技は、号泣する訳でもなく、淡々と泣く訳でもなく、拭っても拭っても涙が止まらない、静かで独特の力強さがある表情。子を産めない体と、仮の母親である幸せの間のジレンマを突かれた、究極の泣きの演技だったと思う。 そして、これは勝手な自分の意見だけど、監督は子役の2人を目力で採ったと思う。ゆり(佐々木みゆ)は、なんとも言えない少し闇を背負ったような表情が素でできてしまっているし、祥太(城桧吏)の目もとてもまっすぐ。ラストの祥太が治を振り返る時の目も、まっすぐで強烈な目の印象を受けたのは自分だけじゃないと思う。 この映画の見方の話をすると、なんというか、一言一言に重みや意味合いの重要性があって、実は相当集中して見ないといけない映画では。激昂しながら思いを叫ぶ訳ではなく、激しいBGMをあてるシーンがある訳もなく、とにかく静かにひとつひとつの描写が繋いである印象。信代が子供が産めない体である事はサラッと第三者が話すし、おばあちゃんが自らの最期を悟り、声なきメッセージを発する場面など、、強調せずにサラッと繋いであるので、下手したら見逃して、感じ取る映画の山が薄れてしまいかねないと思う。 この映画ははっきり言って…二回見ないといけないヤツです!
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