レビュー
これはヨルダン・イスラエル・パレスチナ・レバノンを巡る情勢をどれだけ知っているかでかなり面白味の変わる映画だと思います。パレスチナ解放機構はかつてヨルダンに拠点を置いていましたが、ハイジャック事件を含む過激活動が政権の逆鱗に触れ内戦に発展。多数の難民が発生しレバノンへと逃げ込みました。レバノンではテロ組織「黒い九月」が結成され、これがやがてスピルバーグ監督の『ミュンヘン』へと繋がっていくことになります。 作品のテーマを主張したいが為に登場人物の性格や言動をやたらと誇張した「わざとらしさ」が一瞬鼻につくんですが、全体のメッセージは一貫していますし、設定を踏まえれば決してオーバーな話ではなく、こうなるのが当たり前の世界なのでしょう。後半それが確信に変わりますので、最後まで辛抱して頂ければと。 監督のジアド・ドゥエイリは親パレスチナの家庭に生まれ、イスラエル人やキリスト教徒は敵であると教え込まれたものの、後にキリスト教徒の女性と結婚・離婚。その元奥さんと共同で本作の脚本を執筆しています。 民族や宗教の壁を越えてひとつの家庭を築いたという監督自身の体験談と、そんな二人がこの映画を産み出した事実こそが、何よりも明解な本作への「答え」になっていると思います。ほんのささいなきっかけで人は変わることができる、そんな青臭く見える理想論も、信じてみたくなる勇気をもらえました。
いいね 12コメント 2


    • 出典
    • サービス利用規約
    • プライバシーポリシー
    • 会社案内
    • © 2024 by WATCHA, Inc. All rights reserved.