レビュー
直近で劇場公開・配信された新作をレビュー、今回取り上げるのは有名な病症を生むきっかけとなった事件を描く『ストックホルム・ケース』。 ------------------------------------------------------------ 相変わらずノオミ・ラパスは情緒不安定な女性の役ばかり演じていますが、本作のビアンカも中々にエキセントリック。銀行強盗に銃を突きつけられながらもどこか平然とした立ち振舞いで、犯人であるはずのラースに何故か信頼を寄せていきます。確かに特殊な状況下で犯人の気を引こうとした可能性もありますけど、映画を見る限りこの人は本気で「恋」に落ちていたのではと疑うほど純朴です。 ------------------------------------------------------------ 実際の事件で主に強盗犯と親睦を深め、彼らの代わりに首相と電話で話すメッセンジャーの役割を担ったのは、ビアンカの同僚であるブロンドの若い女性の方なんですね。ただ、本作では夫から邪険に扱われて夫婦仲が冷えきっていたという設定を引用して、ビアンカの方をラースと恋に落ちる主役に仕立てたわけです。それ以外にも微妙に事実を脚色している箇所があり、強盗犯チームも知能指数の低いバカに成り下がっています。 ------------------------------------------------------------ こうした改編によって分かりやすいシニカルなコメディになった一方、見る人によっては人質に取られた被害者たちまでもが、「簡単に犯罪者に共感される愚か者」と解釈されかねない作りになっています。特異な状況が人の心理に大きく左右する、この事件ならではの問題点を全く上手く切り取れていないのは残念に過ぎます。
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