
ジュネ

ジャスト6.5 闘いの証
平均 3.5
直近で劇場公開された新作をレビュー、今回取り上げるのは『ジャスト6.5』。イラン映画としては異例のヒットを飛ばしたノワールです。 ------------------------------------------------------------ 確かに完成度は非常に高く、本作は前半と後半でまるで違う顔を見せます。前半は徹底して「エンタメ色」を意識した作りになっており、世紀の麻薬王を捕まえるため奮闘する警察官の姿を、カメラワークも大胆に使いながら追いかけていきます。その中でイラン社会におけるドラッグの蔓延ぶりを問題提起し、掴みは完璧なんです。私も本作を見るまでイランが18世紀から長らく麻薬の問題と戦い続けてきたことを知りませんでした。 ------------------------------------------------------------ 対して映画の中盤で麻薬王ナセルが捕まると、後半は「会話劇」へとシフトしていきます。刑務所の劣悪な環境を始めとして、ナセルと警察官の激しいトラッシュトークが繰り広げられ、やがてイラン社会に根差す多様な問題が浮き彫りになっていくんです。やはり一番の影響は激しい「格差社会」にあり、そもそも社会の構造を変えようとしない限り、麻薬戦争に終止符を打つことができない、厳しい現実を目の当たりにすることになります。 ------------------------------------------------------------ と、全体のバランスはお見事でなんですけれど、私は後半がどうしても好きになれない。この手の映画で「社会」や「環境」に原因を求めるパターンが非常に多いのですが、それって力強い「画」あってこそ説得力が増すものでしょう。ところが本作の場合はずっと会話のみなので、単にごく潰しの犯罪者が言い訳してるようにしか聞こえず腹が立ってくるんですよ。しかも演者の大げさな泣きの演技で同情を誘ってくるので怒りが増幅。 ------------------------------------------------------------ 結論、犯罪に対してそもそも抵抗感の強い人、曲がったことが嫌いだと言う方にはあまりお勧めできないです。