レビュー
マーク・ウィリアムズが監督・共同脚本を務めた、2020年公開のクライム・アクション。 マーク・ウィリアムズ監督の長編2作目となる本作では、足を洗う為に警察に自首するも汚職捜査官の罠にはめられ愛する女性も傷つけられた凄腕の銀行強盗カーターが捜査官2人に対し復讐を実行する様子が描かれます。本作を自分なりに一言で表すとすれば、「『ラン・オールナイト』の薄っすい水割り」みたいな映画です。まず本作の蒸留酒となる『ラン・オールナイト』的な要素として、「リーアム・ニーソン主演の最新アクション映画」&「”自身の汚れた過去に対する贖罪”にまつわる話」の2つが抽出されています。本作は『Honest Thief(正直な泥棒)』という原題の通り「悪人が自首させてもらえない」といったユニークな導入部となっていますが、自分はこの土台作りの時点でもかなり粗が目立っていると思います。まずカーターが銀行強盗に手を染めたのは「妻も仕事も失い精神が不安定となった父親の為」であり、更に彼は犯行ではおろか海軍時代でも殺しは一度も行っていないという事で、そもそも主人公の過去がそれほど汚れていないという点が一つ。そしてもう一つ残念な点として、このカーターは電話で自首する際に何を思ったか”甘えを要求”するんすわ!面会の自由はまだしも「お金は全部返すんで僕の刑期短縮してくんないかな…」と減刑の条件まで偉そうに提示しやがっており、この序盤の時点で早くも”過去への贖罪”というテーマが完全に崩れ去っています。しかも自首の理由が「いい女に一目惚れ」って、この辺りももう少しどうにかならなかったのか。あと細かい所ですが個人的にもの凄く引っかかった点として、その後ヒロインのアニーと共に逃亡することになった際に「君と居ると海軍時代の地雷対処や銀行強盗の時と同じような快感を感じる」とか言ってましたよね。もちろん生きる実感が云々だとは理解出来ますが、それにしても最愛の女性に愛を伝える表現としてこれはかなり失礼じゃないか?しかも今お前は弁明している立場だろうが。 終始この調子で進む本作ですが、サスペンスとしてのバランスもガタガタな印象ですね。主人公と敵対する汚職捜査官の描き方もかなり一面的ですし、あのジョン捜査官を物語上一番の宿敵として置くには悪事の規模から俳優の風格まで全てが弱過ぎると思います。しかもクライマックスの決着が間接的な上に動きもめちゃくちゃ地味で、アクション映画としても全然乗り切れませんでした。一方で終始自分の犯した罪に対し後ろめたさを抱えているラモン捜査官に関しても、終盤でカーターが直接交渉し協力させたにも関わらず実際にはカーターが彼の背中に銃を突きつけながらその場に同席。協力というのは盗聴器を仕込ませる事だと後に判明しますが、そうなるとますます同席する必要なんてありませんし、カーターが同席したせいであの場は惨劇と化します。しかもそこで悲惨な結末を迎えた彼に対しカーターが悔やむ描写が全く無く、それどころか彼は撃たれた途端に画面から一切姿を消してしまうという不自然極まりない演出。更に犯行の証拠となる例の盗聴器をカーターは犯人が逮捕された後に警察に送る為、本作に唯一期待した相手に一泡吹かせるようなトリック的カタルシスすら皆無。ここまでガッタガタな計画、ガッタガタな脚本、ガッタガタなサスペンス、ガッタガタな映画に『ファイナル・プラン』なんて大層な邦題付けんじゃねえ!という事で個人的には全く性に合わない作品でしたが、御年69歳のニーソンが未だ現役バリバリでアクション映画に主演している訳ですから、出来はどうであれ自分は今後もニーソン作品を追っていきたいと思います。最後に余談ですが、自分は一定量文句のある作品の方が長文になるという傾向が…(笑) ジェフリー・ドノヴァン、ジェイ・コートニー、ロバート・パトリックと、脇を固めるキャストもかなりのアクション俳優揃い。
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