レビュー
レビュー
star3.0
1800年代のアルゼンチン。 哲学的な疑問で始まる、長い音のない沈黙ー。色のない世界。物語りの主人公、エルサとマルセラは学び舎の下で出会う。マルセラはどこか放っておけない母性をくすぐる雰囲気の女性と感じた。悪い言い方をすれば誰にでもつけいられてしまう頼り無さ・弱さがある。 エルサは校長の親戚でもあったため、仲良くなればメリットがたくさんあると言わんばかりに初めて会った時に先手を打った。エルサはマルセラに時に優しく、時にいじわるをして強烈に緩急をつけて心理的高度なテクニックで揺さぶりをかけて近づく。 恋愛的「好き」が働いた時の接し方と思う。 見事に恋の呪縛に掛かってしまったマルセラはエルサのことで頭がいっぱいになる。エルサも同様だ。 二人は共感点が多く惹かれ合うファクターをたくさん持っていた。しかしひょんな話のきっかけが孤児だったマルセラの過去が引き金となり悪気のないエルサに冷たくしてしまう。 喧嘩をしてさらに愛を深め、またさらに好きになる。 大人は何一つ理解してくれない、親も本当の親かわからない。何もかも不確かなマルセラの人生。受け入れられたことがないマルセラの人生。弊害が多ければ多いほどさらに燃え上がる。 二人は心を通わせ、恋人の距離に近づいてく。 決定的なスキンシップをするまでの展開はベタなはずの海での水掛けのシーン。何べんも見ているはずのシーンなのに心が揺れた。 「馬を買ってあげる」「海にあなたといたことが一番幸せだった。」この想いだけが二人の確信できることだった。今まで感じたことのない幸せな気持ちで帰ったはずも、一気に奈落に落とされた。 「学校に行くな」この時代、弱い立場だった女性は本を読むことも、夜遅く帰ることも、学校に行くことも友達を家に呼ぶことも父に支配・採取された。母はそんな娘の味方をしたくも女であったが為、父に逆らえなかった。 両親は気づいていたのかもしれない。ただならぬ二人の雰囲気に。同性愛は宗教で法律で禁じられたもの。ましてや、修道院に学びに行っている身なのであれば本来死をもって償わなければならない禁忌。 引き剥がされた二人は手紙というたった一つの手段で繋がった。愛してるという言葉は美しい。 3年後二人は教師という仕事を手につけて再会し同棲する。幸せの、物語りの、人生の絶頂を迎える。しかし、同性愛であることが二人のキャリア、生活をめちゃくちゃにしていく。人権を侵害した罵倒、無視、暴力。同性愛である以上抵抗すら許されないのだ。身を守るはずの法律が通用しない。差別と戦うか、アイデンティテイを守るか、自らの手でこの幸せを引き裂き当たり前を装い生きるか。 エルサは自分のせいで、マルセラがキャリアを失うこと、生きていけなくなることを恐れ、普通の人生を送るように諭す。別れようと。 いろんな弊害を乗り越えての結婚式のシーンは心臓がバクバクした。マルセラを狙って男が邪魔に入らないか、村人が一揆を起こして台無しにならないか。無かったことにならないか。この時代に同性婚を成し遂げたことは偉業。強い執念。子供を宿し既成事実まで作り二人でいることだけに動いた。バレるたびに街を転々としなければならない。その度に0からスタートする。運賃を稼ぐのに身をボロボロにして働いた。共に生きる強い絆。愛してるというだけで、有無を言わさず逮捕。とんでもない時代。いまだ死刑になる国も多く存在する。観ていてとても目を背けたくなるシーンが出てくる。理解してくれる司法官のおかげで、同じ刑務所で女性として入ることを許されたエリサ。子供を産むこと、育てること、息をする、床につく。全て塀の中の方が安全という皮肉。 レズビアン映画はバットエンドが多すぎるので、ラストはハッピーで終わって欲しい。この映画は暗く辛いシーンも多く存在し、現実の厳しさをありのままに描いている。社会的政治圧力は庶民の人生を簡単に壊すことができる。小さな村では偏見に晒されて強い差別を受けたけど、ポルトガルは違った。彼女二人がインフルエンサーになり、女性たちが指示をした。時代を変えるパイオニアはいつだってバッシングを強く受ける。ただ同時に理念に共感する人も必ずいる。 最後は夢だった馬も手に入れ、幼かった我が子とは引き裂かれてしまったも、再会するシーンで幕が下りる。事実は小説より奇なりを地でいく、半フィクションの物語。諦めずに一緒にいることの難しさ。死を賭け続けた二人はとても強い女性。
ネタバレがあります!!
10