
shimabukurock
見ている最中

岬の兄妹
平均 3.3
世間の評判に比べて僕はとても冷ややかに観ていた。 とりあえずレビューの前に。 僕は今年劇場で映画を観る作品選びにTBSラジオの「アフター6ジャンクション」の映画評論コーナー「ムービーウォッチメン」の評論作品は必須で観ている。 そして、本日、評論するRHYMESTERの宇多丸さんがまさに観に来ていたのだ。しかもお昼に食べたカレーも同じ店で…。 ということも踏まえて、映画が頭に入らなかったとも言える気もするが…。 「カメラを止めるな」の時も思ったのだけど、インディペンデント映画、というより、「自主制作映画」という風合いの作品故の「過剰さ」が本作もかなりマイルドに感じる。 それなりに悲劇的、それなりにグロテスク、な描写はあるにはあるのだが、物語的な論点やテーマや、シンプルに監督が描きたいもの、に有り余るような熱情やこだわりが表現として提示されていない。 貧困や障がいという社会的な問題に対して切り込みたいのか、それらを超えた卑近な人間たちの俗悪な感情を描きたいのか、そしてそれらをコメディ的な視点を加えてより哀感を感じさせたいのか? そのどれもがあるし、要素としてはあるのだが、例えば美味しい煮込み料理に例えるのなら、やはりそれぞれの出汁が溶け合っていないというか、具材が味が染みてないというか。 結局のところ、画面を通しての「味わい」にはほど遠く悪ふざけに見えてしまうし、この兄妹の抱える境遇や、尊厳や、安直な言葉を使えば「絶望」にまでは至っていないと思う。 誤解を恐れずに言えば、「知的障がいを抱えた妹に生活のために売春をさせる兄」としての設定を通して、物語の視点や切り口なら本来いくらでもあるのだが、いくらでもある、というところをそれぞれを断片的に描いていて結果的に何を描いているのかという物語的なカタルシスに乏しいと思う。 兄役の松浦祐也の怒りの根源が何かが演技的実力と背景の練り込み不足。妹役の和田光沙も一見力演に見えるが感情がどうしても「無味無臭」に見えてしまう。 唯一演技的にカタルシスがあったのは半笑いで「こんな娘連れて来たらあかんやん」と何度も言う客のみだった。 僕だったらこの題材ならば「売春」に関しては天才的な才能を与えられたという設定にして、この感情を読み取りづらい妹を中心に据えての物語の方が観たいなぁと思った。 僕にはとても残念な出来の作品。