レビュー
てる

てる

2 years ago

3.5


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遠い夜明け

映画 ・ 1987

平均 3.6

すごい話しでしたね。 反アパルトヘイトの話しなのだけど、これが半世紀前の出来事だということが信じられない。日本ではここまで残酷な差別はないので、この作品のような差別意識を理解するのは難しい。 しかも、このアパルトヘイトが廃止になったのが、1994年だそうだ。まだ30年も経っていない。人種差別とはこうも根深くて拭いきれないものなんだね。 黒人差別の映画は数多くあるし、名作も多い。なにがしかの映画祭で受賞している作品も多くある。なのに、今だにこの差別というものが残っている。 それは長い年月、差別を当たり前としていたわけで、その差別意識を完全に払拭するのは、同じくらい長い年月をかけねばならないのかもしれない。 その待遇を不当だとして立ち上がった人たちがいる。キング牧師やマルコムX、スティーブ・ビコもその一人だ。彼らは紛れもなく英雄だ。 私であれば、不満を言いながらその体制に甘んじてしまうだろう。それを良しとせず、立ち向かっていけるのは物凄いパワーを必要とする。 彼らは、歴史がそうであったから、制度がそうなっているから、などと仕方がないと諦めずに立ち上がった革命児であった。彼らは差別の歴史の軌道を大きく変えた。 だが、それは10年、20年では払拭できない。もしかしたら、何世代もかけなければならないのかもしれない。それほどまでに根深いものなのだろう。 でも、彼らが立ち上がったおかげで、彼らの尊い犠牲のおかげで、差別の歴史が50年、100年早く変わることができたのかもしれない。 どこかの誰かが言っていたが、我々は誰かの歴史の上に立っている、誰かが望んだ未来にいるんだ、だからこそ、今はどんな形であれ、最も平和な時代なんだと。 その言葉は必ずしも正しいとは限らないが、そうであってほしいと思うのだ。 この作品の感想に移ろう。 ウッズ家の人たちがロンドンに亡命を果たすが、そのときに、ウッズが牧師の格好で難を逃れる。白人だが、牧師であれば、こうも待遇が違うものなんだね。キリスト教ってアフリカでもこんなにも浸透していて、かつ、大切にされているのを観ると思いがけず感動してしまった。宗教には人種差別を越える絆があるんだね。 この作品の最も大事なテーマって過去の残酷な歴史、アパルトヘイトだと思うけど、そこだけじゃない。 ウッズとビコの人種の壁を越えた友情もあると思う。 その友情があったからこそ、彼の死を嘆き、彼の死を公にして、この問題を全世界に訴えることにしたわけだ。 ウッズが出版した本がどれだけ世界に影響を及ぼしたのかわからないが、この本のおかげで、この作品と巡り合い、ビコという素晴らしい人物がいたことを知った。そして、その彼があまりにも凄惨な死を遂げたことも知った。 ウッズのその行動が、差別の歴史の軌道を少し変えたのは間違いない。 彼もまた黒人の英雄である。黒人の英雄は黒人だけではない。そんなことを知れた作品であった。