レビュー
評論家はしばしば寄生虫に喩えられる。他人の創ったものにあれこれいちゃもんをつけるだけで、自らは何も生み出さないからだ。本作の主人公もまた、「人生の評論家」だと言える。「意識高い系」を自認して周囲の人々を見下し、高みに立っていると勘違いしているが、彼自身は何者でもないことに気付いていない。自意識だけ肥大して、からだ(身体)が伴っていない。ヒロインは大学の講義室で彼がせっせと演劇サークルの台本を執筆していた頃を回想し、「あの時の君が好きだったよ」と言う。それが過去形なのが哀しい。「桐島、部活やめるってよ」もそうだったが、朝井リョウの小説の真骨頂は《喪失感》にある。刺さる映画だ。
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