レビュー
奄美大島を舞台に、そこで暮らす少年と少女とその家族を通し、自然と人の触れ合い、生と死を描く。 全体を通して静謐な雰囲気ながら、自然(特に海)を雄大に描き、その大きな存在の中にある人々の生と死の連続性、一体性が表現されているように感じた。 東京にいる父親を訪ねるシーンでは、象徴的に人工的な建造物が多く移されており、島とのコントラストが強く、自然をコントロールしようとする人間在り方があらわされ、主人公の父親は、それをエネルギーの強さと捉えている。 奄美での人々は、自然をエネルギーと捉え、そこに溶け込む様に暮らしていく中で人々にそのエネルギーが溶け込んでくるように感じているのかもしれない。 母親がもうすぐ死んでしまうことに苦しんでいた少女と、父親と離れ、他の男と関係を持つ母親に対する嫌悪感に悩んでいた少年は、最期自然の中で一つになり、海の中で溶け込んでいった。 本作品で描かれる死生観には、ポジティブさもネガティヴさも無く、ただ在るものをそのまま受け入れ、そしてその中で生を繋げていくことが、ひととしての在り様である、ということをある種ドキュメンタリーチックに語っているようであった。 多くの場面において、演技に誇張された部分がなく、アドリブで対話しているかのような自然さがあった。 しかしその分幾つかの場面で、余りにも台詞感が強くシーンがあり、またそこがテーマと密接に関わるような直接的な表現だったため、急に作り手の気配が匂い立ってしまい、少しそこが引っかかった。 もう少しナチュラルな言い回しで作品としての雰囲気を保った方が良かったのでは…とも感じた。 ラストにタイトルが表示される。「二つ目の窓」という題の解釈としては、今まで世界を覗いてきた窓(自分を主体とした世界)とは異なる、新たな景色を映す窓(自然、環境を主体とした世界)があり、少年少女はそこから世界を眺め始めた… という風に個人的に捉えた。 雰囲気としてはソフィアコッポラ、アピチャッポンの作品と似た部分が多い。 劇場で観たいシーンが多かった。 監督インタビューではタイトルの意味として、「海や山、男性や女性など、自分と違うものが2つ一緒になって扉を開いてくれたら、いい世界にいけるかなと。今回の映画は根底に他者を認めるということがある。自分にはないものを受け入れるということがメッセージ」述べている。
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