レビュー
【現実と錯覚する映画】 街並みも、生活音も、空の描写も超リアル。実生活での異常気象も相まって、他の映画にないリアルさがある没入感。そんな映画の山で主人公が迎える運命にはもう涙。 ◆概要 原作・脚本・監督は「君の名は。」の新海誠。声の出演に「兄に愛されすぎて困ってます」の醍醐虎汰朗、森七菜、小栗旬、本田翼、平泉成、倍賞千恵子ら。「君の名は。」に続いて川村元気が企画・プロデュース、「RADWIMPS」が音楽を担当。 ◆ストーリー 離島から家出し、東京にやって来た高校生の帆高。生活はすぐに困窮し、孤独な日々の彼の今後を示唆するかのように、連日雨が振り続く。そんな中出会った陽菜という少女には、「祈る」ことで空を晴れにできる不思議な能力があり……。 ◆感想 空と繋がり、天気を操る不思議なファンタジー。雨に日差しに雷まで、その映像も音も美しい。それだけでも2時間見れるさすがの新海アニメ。その世界観に包まれながら、まっすぐで純粋な主人公穂高に心打たれる。 今作はまず音に注目したい。耳を自然に研ぎ澄まされる優しい雨の音、激しく降る雨の音、そんな自然音から、スマホの操作音、着信音、バニラトラック(あのうるさい宣伝トラック)にいたるまで笑、めちゃくちゃリアル。実写でないアニメがまるで実写映画になるような不思議な感覚だった。天気を操るその映像美に目が行くはずなのに、まず音のリアルさにグッと惹きつけられたのが意外。 そしてもちろん映像美。東京のリアルな街並みはもちろん、巨大で不思議な形の積乱雲も綺麗だったし、“水の魚”なんてその触感すら手に取るように伝わってくるレベル。花火の空撮的映像はピカイチ美しかった。でも何より、雲の切れ間からの日差しの再現性。たまに実生活で見かけるあの美しい情景が見事にスクリーンに映し出されていた。前述の音もしかり、実生活の情景の再現性が非常に高い映画だと思う。 そのリアルさで余談ながら、関東での記録的な日照時間の少なさと、雨が降り続くこの映画のリンク。もちろん意図できるものではない。さらに、京都アニメーションの事件が公開前日に起こる、日本全国でアニメを応援する機運が高まるこのタイミング。実生活のリアルともリンクしてしまうこの映画は、もう何か持っているとしか言いようがない。 ◆ 以下ネタバレ ◆ ストーリー的には、ファンタジーとリアルが同居する映画なので、雨が3年も降り続くファンタジーと、水没した東京で人が生活できるのかというリアルの交錯が気になってしまった。どちらかに振り切ってほしかったけど、まあそこは置いといて。 落ちてきた指輪が穂高を動かし、ほぼ妄信的に、でも一心に陽菜のもとへ走る穂高の姿に泣けました。「愛にできることはまだあるかい」のメロディと、“君と分け合った愛だから君とじゃなきゃ意味がないんだ”なんて歌詞がとても効果的に使われている、まさにこの映画の山のシーン。RADWIMPSのボーカルは音楽監督として前作より中身に関わったらしい(本作のwikiより)。音も映像美も手伝って、一番美しい、心に響くシーンになっていたと思う。その後2人が繋がり、雲の中を泳ぐように飛ぶシーンはもう陶酔感マックスでした。 前作が記録的過ぎて嫌が応にも期待された本作。自分の期待にもバッチリ応えてくれました!
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