
ジュネ
9 years ago

はじまりのみち
平均 3.2
『クレヨンしんちゃん オトナ帝国の逆襲』『河童のクゥと夏休み』など数々の優れたアニメを輩出してきた原恵一監督の初実写作品で、それだけで十分記念碑的な本作ですが、主人公にあの木下恵介監督を据えたことで更に大きな意義を感じる一作でした。 ドラマパートはこれ以上ないほどにシンプルであるものの、母を演じる田中裕子や劇中唯一のお笑い担当・濱田岳の熱演が光り要所要所でグッと心を掴まれますし、何より素晴らしいのは、それによって木下恵介監督自身の作品が更なる彩りを放ちながらより魅力的に輝き出す点です。 事実、本作では中盤にて木下監督の『行軍』が、終盤には彼のフィルモグラフィーが劇中劇の体で映し出され、下手をすると『はじまりのみち』の中で最も鮮烈な印象を残すのは、木下監督のフィルムワークそのものです。 しかしこれは決してマイナスではなく、原監督が木下恵介氏に捧げるリスペクトの精神が滲み出るように伝わり、何とも言えない余韻を残します。二人の天才が一本のフィルムを通じて奇跡的な邂逅を果たしたかのような本作は、映画マニアならずとも一見の価値のある1本だと思います。