
panopticon
7 years ago

夢
平均 3.1
こんな夢を見た…全8編、夢を映像化したという短編集。スティーブンスピルバーグ製作、マーティンスコセッシも出演している。黒澤明晩年の作品。 各編において、インパクトの強い映像的な美しさ、力強さを存分に備えている。 それぞれの話は唐突に始まり、そして余韻を残して終わる。整合性や合理性がないものが夢であり、オムニバスな構成は夢の世界を描くならではのものであろう。 しかし、この映画にはそれぞれ通して「自然」と「生命」といった明らかなテーマがある。 夢はそれ自体に意識的なコントロールは出来ない。しかし一人の人間が見るものであり、それには無意識が多分に関わってくる。この夢を見ている人物の自然と生命への眼差しがそれぞれに又いで繋がるテーマを産んだのだろう。 単純に環境破壊、短絡的な技術発展への警鐘を描いているととることもできる。 鬼のパートはあまりにもグロテスクだし、富士山噴火は原子力発電に対する直接的な言及がある。そして科学とは無縁に、自然と共に暮らす人々の幸せそうな姿が最後の夢で描かれ、エンドロールが流れる。 しかし、あくまで設定は夢である。夢は現実から乖離し、いつまでも手が届かないものである。人類全体が自主的に科学を捨て自然主義に立ち返ることは今や不可能であろう。不可能なことに思いを馳せる。そのツールとして夢という舞台設定を用いたのではないだろうか。 色彩の操り方が素晴らしかった。色とりどりの花畑やゴッホの描く自然風景の数々から、地獄のような赤黒さ、着色された放射性物質など、鮮烈な印象が画面全体に満ちていた。 最期の明るい葬列シーンが素晴らしかった。これぞ夢のような世界だと思う。自分が死んだ時もこうしてほしいな…