レビュー
cocoa

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2 years ago

4.0


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異人たち

映画 ・ 2023

平均 3.5

原題は「All of Us Strangers」。 「我々みな異人たち」の意味です。 ちょっと前に確認のため観た、山田太一氏の原作を大林宣彦監督が作り上げた『異人たちとの夏』をイギリスでリメイクした作品です。 アンドリュー・ヘイ監督作品は好きなので楽しみにしていました。 ちなみに山田太一氏の亡くなる前に出来上がった映画を観ていただき受け入れてもらえたのも嬉しかったようです。 ロンドンのタワーマンションに暮らす40歳の脚本家アダム(アンドリュー・スコット)。 12歳になる前に両親を事故で亡くし、孤独のまま生きてきたアダムだった。 ある日、子ども時代に暮らしていた郊外の家を訪ねると、他界している両親がアダムを温かく迎えてくれる。 さらにロンドンのマンションでは同じように孤独な若者ハリー(ポール・メスカル)と知り合う。 アダムの周りの不思議な現象を描いた…そんなストーリーです。 日本版の蒸し暑い夏の空気感とはまったく違う舞台でした。 アダムの暮らすタワーマンションの大きな窓から見える空や街の景色が幻想的。 窓から遥か下を見下ろすシーンはヘイ監督の『ウィークエンド』を思い出す。 今回 大きく違ったのはクィアのカップルにしたこと。 「つらくない?」と部屋に突然来たハリーを一度は受け入れずにドアを閉ざしたアダム。 (この事が後に大きな出来事になるのは日本版も同じだった) アダムもハリーもゲイで子どもの時から両親にも言えず、孤独な人生を歩んできた。 ハリーは途中でカムアウトしたけど、それは両親や兄弟との関係の外側にポジションが変わったこと。 (つまり家族の仲間にはなれなくなる) そんな孤独な2人が急速に愛し合うのは違和感はなかった。 自身もゲイだと言うヘイ監督の2人の描写はかなり濃かった。 アダムが昔の家を訪ねると若い時の両親が迎えてくれる。 父をジェイミー・ベル、母をクレア・フォイが演じるが、ゲイに対する昔の考えでアダムに話す内容がリアルだった。 80年代のゲイに対する無理解、さらにAIDSの問題など。 それでもお互いに「会えて良かった」、「立派になった」と言葉を掛け合う。 昔かたぎの父が言いにくいけど「愛しているよ」とアダムに声をかけるのは日本版と同じようだった。 (今半別館ではなく、ロンドンのショッピングセンターの食堂だったけど) ハリーの真実はほとんど同じだった。 初めてアダムの部屋を日本のウィスキーを片手に訪ねて断られた時にハリーの人生は動いてしまった。 生きていても死んでいてもみんな異人たち。 アダムとハリーが天の星になるようなラストのショット。 「パワー・オブ・ラブ♪」の流れるエンディングは好きでした。 あの日本版をここまで繊細に表現するのかと驚いた。 そこにはヘイ監督のこだわりが強いと思う。 人を愛したことがないと言うアダムだけど、ハリーを守ろうとするのは愛だったし、アダム役のアンドリュー・スコットも熱演。 さらに大好きな『アフターサン』のポール・メスカルの繊細な演技も活きていたと思う。 と言うことで、ペット・ショップ・ボーイズの「Always on my mind ♪」が耳を離れないです。