レビュー
星ゆたか

星ゆたか

4 years ago

4.5


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羅生門

映画 ・ 1950

平均 3.5

2022.1 1951年9月8日、サンフランシスコ会議で対日平和条約が調印され、敗戦後、連合軍の占領下に置かれていた日本の独立が約束された。その2日後、〔ラショウモン ベニスグランプリ〕の電報に、出品した大映社長さえも、『グランプリ それは何だね?』と聞き返したという。それほど映画人にとっても、一般の人達においても、認知しらざる快挙だった。またグランプリに与えられる金獅子像は結局日本人関係者が一人も出席しなかったので、誰かが探してきた日本人に似ているベトナム人に手渡されたという。 私はこの映画を今から48年ほど前に、初めて黒澤明作品として、静岡名画座で見て、とても映画の面白さに興奮した記憶がある。 白黒映像の世界。森の木葉の間から射しこむ夏の太陽光線の煌めき、映像と音楽の交響詩。朽ちひしがれた羅生門に激しく降りこむ雨。 検非違使(今の検事と判事を兼ねたようなもの)の石庭風な様式美の展開。この時の被告側だけの陳述描写は、セット、人物配置、役者の演技と相まって、ぞくぞくするほどの魅力だ! まさにこの映画の俳優達の演技には、敗戦後の日本人の復興にかける生命の躍動感に溢れ、また映画全体のスタッフにもそれは同様で、その映画の力は、いつの時代の観客にも元気を多いに与えてくれる。 また四人の証言によって同一事件を多様にあいまいに語った物語構成は、話法の一義性から多義性への展開(いつの世でも、人間、誰でも自分をかばう嘘をつきたがる)として、大変興味深く、今日でも充分通用する。