レビュー
YOU

YOU

4 years ago

4.0


content

ヴィデオドローム

映画 ・ 1983

平均 3.3

2021年09月23日に見ました。

デヴィッド・クローネンバーグが監督・脚本を務めた、1983年公開のSFスリラー。 主人公マックスが正体不明の過激なポルノ番組「ビデオドローム」の虜になっていく様子を描いた本作は、”サイバーパンク”ジャンルの先駆けとなった作品とのこと。「そのあまりの難解さから公開当時は大赤字を叩き出したが、アンディウォーホールをはじめ業界筋からの評価は軒並み高く、その後ビデオ化されると同時に熱狂的な支持を集めクローネンバーグは一躍注目の作家となっていく……」、もうこれぞ”正真正銘のカルト映画”と呼ぶべき絵に描いたようなシンデレラストーリーですよね。ただ個人的には難解さ故のつまらなさは全く感じませんでした。確かに『スキャナーズ』や『ザ・フライ』と比べると物語構造は複雑ですし賛否が分かれるのも大いに納得出来ますが、その時々場面内で起こっている事態は少なくとも理解出来る作りになっています。そして何より本作は全編通してシーンごとのインパクトがとにかく凄まじく、自分はもはや「話が難しくて理解出来ない」という意識にすら至りませんでした。しかしそれは裏を返せば「ストーリーを差し引いても尚残る映画的な豊かさ」とも言えますし、かねてより自分はこれもまた”映画の立派な楽しみ方”だという風に断言し続けています(誰に向かってやねん)。それは例えばリック・ベイカーが手掛けた特殊メイクの斬新さであったり、常人には思いもつかないようなクローネンバーグの鬼才的アイデアの数々、サイバー・パンク黎明期でもある82年当時の時代性などからもビンビン感じ取れますし、自分はこうした「全貌を掴み切れずともこの危険なまでの世界観に魅せられてしまう」という体感性こそがカルト映画のカルト映画たる所以だと思います。 劇中で語られる「異物との融合による肉体的変容と精神的錯乱」は『ザ・フライ』とも非常に共通する話ですしその変容ぶりも2作共にかなりグロテスクですが、本作の場合はそこに「物理的な痛々しさ」が明確に感じられます。特に主人公マックスの腹部に出現する”縦長の穴”なんかは完全にアレにしか見えません。そこに手を突っ込まれたり物を取り出したりするシーンでは凝視するのがかなりキツかったりもするのですが、これは女性に対する過度な性的・身体的暴行を”有意義な刺激”だと信じて疑わない男根主義的思想を持つマックスへの痛烈な皮肉でもありますし、これもまた80年代アメリカという時代背景とは不可分な描写だと思います。また本作を”難解”と言わしめる最大の要因でもある「現実と妄想の不明瞭な境目」の件、これも自分はクローネンバーグがその解釈の幅や余地をあえて広めに取っているように感じますし、明らかに本作は「何度も観直しては悩んでを繰り返すことこそが楽しいタイプの作品」だと思います。カルト映画としてもサイバーパンク映画としてもその「らしさ」を大いに堪能出来る一作ですし、個人的にはかなり楽しめました。 『ヴィデオドローム』という表記には違和感大アリ。統一されてるのかどうかも微妙でもの凄くムズムズする。