レビュー
2019年123本目は黒沢清監督が前田敦子を主演に迎え、ウズベキスタンでロケを行った『旅のおわり、世界のはじまり』。 実は今作、ウズベキスタンと日本の国交50周年を記念して作られた映画でして、黒沢監督個人の思い入れがあってウズベクが舞台に選ばれたわけではありません。疑問なのはこれまで死生観をテーマとしたサスペンスやスリラーの名手と言われてきた黒沢氏を、何故にこんな平板な成長譚に抜擢したのだろうということで、完全な起用ミスだと思います。 突如なんの説明もなくロケハンがスタートし、言葉も理解できない異国の地に放り出された葉子をひたすら追いかけていく展開は、見ているこちらも共に孤独感や疎外感を共有しているようで一瞬前のめりになるんですが…。「2国間の友好」というテーマ・制約に縛られているせいなのか、前触れもなく日本との関係や歴史を語り出したり、友好について説くシーンがわざとらしく挿入されるなど脚本のぎこちなさは否めません。 調べてみると国立劇場を登場させることも映画製作における必須条件だったらしく、黒沢監督のように自由な世界観や表現を武器にしている人にそんな「紐付き仕事」を与えないでくれよ…と些か同情する出来映えでした。
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