レビュー
2020年158本目は、世間を騒然とさせた僅か20代の女性二人組による金正男暗殺事件を取り上げました、『私は金正男を殺してない』。 ------------------------------------------------------------ 暗殺された事件当時はメディアもこぞって取り上げたにも関わらず、その後の彼女たちがどうなったかはいつの間にか音沙汰がなくなり、イメージフォーラムやアップリンクなどのミニシアターでしか上映されない本作を見て初めて、私たちは金正男殺害の真相を知ることができます。これは真実を徹底的に闇へ葬ろうとする明らかな国家の陰謀で、本当に恐ろしくなりました。 ------------------------------------------------------------ 北朝鮮は経済的にも軍事的にも「脅威ではない」などと揶揄されがちですが、金正男を消し去るための作戦は用意周到で、どこにも付け入る隙がありません。貧困にあえぐ女性たちを搾取・利用する手口も狡猾そのもの。今回の事件に関しては完全に「してやられた」わけで、認識を改めるべきだと感じます。ところが北朝鮮よりも下衆に成り下がったのは事件現場となったマレーシアの政府や警察です。 ------------------------------------------------------------ なんと彼らは冤罪をなすりつけ、犯人を逮捕した既成事実を作り上げて体面を保とうとするんですから、「正義」や「司法」の影も形もありません。国家が犯罪に荷担する瞬間をリアルにえぐり出していて、衝撃度で言えば本年度ナンバー1じゃないでしょうか。事件の後も彼女たちはメディアやSNSを介し「犯罪者」として攻撃を受け続けています。本作を通じて真実がもっと広く知られることを願うばかりです。
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